せんだい、甲板士官、通信士

 

当ブログにも度々登場する甲板士官とは、ぶっちゃけ言ってしまえば『雑用係』に他ならない。

甲板士官としてやるべき業務も決まっているが、厄介なのは『誰の所掌であるか分からない業務は全て甲板士官の業務』と規定されている点にある。

当然、上級士官にとってはこんな便利な存在はいない。

何か所掌がハッキリしない業務が出てきたら

「おーい、甲板士官。この件、お前が処理しておけ」

といって、当該文書を『ポーン』と渡されることもある。

そういうものの中には所掌が不明確でもなんでもなく、完全にそっち側のものも含まれているので押し付けられた感が半端ない時もある。

 

・・・などと最初からフルスロットルでデメリットを並べてしまったが、今回の主題は『甲板士官のメリット』であった(汗)

ついつい興奮して我を忘れてしまうのは、現職の頃から変わらない悪癖である。

 

ちなみに今回の記事は試験的に従来の『ですます調』から『である調』に文体を変更している。

理由は単純で文章を書くという行為においても『ですます調』を使用することは非常に肩がコルものだからである。

海上自衛隊という大看板を掲げている関係上、品位を保つため多少無理をして『ですます調』を使用してきたが、管理人の人格が実物以上に『真面目でステキな感じ』だと誤解されているようなのでこの辺で誤差を修正しようという狙いもある。

どさくさに紛れて軽く言い訳もぶちかましたところで、早速本題にいってみよう。

 

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甲板士官のメリットその1

同期会で自慢できる。

初級幹部の同期会におけるメインテーマには

『誰が一番忙しい(大変)か自慢』

というものがある。

この時に『甲板士官』のカードを持っていると一段とグレードが上がるものである。

ちなみに私は役職が通信士兼船務士であり、係士官は『甲板士官』『体育係士官』、内務的には『2分隊士』を兼任していた。

(メリットその3で詳しく述べるが、本来甲板士官は分隊人事に関係しない幹部を充てることが望ましい)

これは最初に勤務した艦が地方隊所属だったため、若手幹部の絶対数が不足していたからである。

艦隊所属の大型艦であれば同期や直近の先輩後輩がいるので、ここまでの兼務とはならない。

ところが自他ともに認めるヘンタイの私は、自分に明確な責任が生じたことによって幹部候補生学校や遠洋航海までの『ヤル気なしモード』から『ヤル気MAXモード』に切り替わる契機となったので不思議なものである。

『ヤル気スイッチ』とは個人個人によって装備されている場所が異なるという実例である。

 

甲板士官のメリットその2

所属分隊に関係なく顔が利くようになる。

私は着任当初から『甲板士官』に配置されたわけではなく、2~3か月勤務して艦での生活に慣れてからの拝命だった。

これは艦長の鶴の一言によって決定されたのだが、正直なところ拝命した直後は

「マジか~。今でも兼務ばっかりで大変なのに。甲板士官も・・・絶対ムリ!」

と思っていた(笑)

しかし、いざ甲板士官を拝命して各種作業隊の作業に立ち会っているうちに、他分隊乗員とのコミュニケーションの機会が増えて視野も格段に広がったと思う。

 

それまでは他分隊員から

「通信士」

と呼ばれていて、何となくよそよそしさを感じていたが

「甲板士官」

と呼ばれるようになってからは、親しみを感じるようになった。

(単なる気のせいかもしれないが)

いずれにせよ、艦の生活に慣れてから『甲板士官』を経験させてくれた艦長のご配慮に感謝するものである。

もし、最初から兼務していたら早々に潰れていた可能性も否定できない。

 

甲板士官のメリットその3

勤務評定会議での強い発言権

自衛官である以上、幹部にも海曹士にも全て序列(指揮継承順序)がつけられている。

上級者が倒れても速やかに次席が指揮をとる必要があるからだ。

護衛艦内においても乗員の艦内序列を決定するために『勤務評定会議』なるものが実施される。

会議において、誰がみても序列の優劣がはっきりしている場合は問題ないのだが、時々優劣判定が微妙な場面が出てくる。

そこで各分隊長同士は自分の分隊員の序列を一つでも上げてやろうと躍起になって推しまくることになる。

しかし、そこでの意見は客観性に欠けるので第三者的意見が必要となるわけである。

 

ここで颯爽と登場するのが甲板士官なのである。

各分隊長同士の言い分が煮詰まった頃合いを見計らって艦長から

「この件について、甲板士官の意見はどうか」

と意見を求められる。

ここで普段から各乗員の勤務ぶりを書き留めたメモ(閻魔帳)をサッと取りだして、それぞれの普段の勤務態度などを基に自分の意見を述べるのである。

(たとえ対象の乗員について何も記されていなかったとしても・・・ね。そこはハッタリも必要だから)

結果として、自分の意見が採用されて序列が決定することも多く、責任の重さと自分の意見が採用された喜びを同時に感じるものである。

普段から乗員の勤務する姿をよく観察することの重要性はこの時に学んだといって良いだろう。

また、このような人間観察及び人間理解は自衛隊のような組織で勤務する上で必須の素養であると確信している。

注意しなければならないのは対象に2分隊員が含まれる場合で、自分が『2分隊士』であるということを参加者に感じさせてはならないということである。

あくまでも客観的に『甲板士官』として判断した結果として、2分隊員の方が優位だったと認められるよう公正な意見具申に努めなければならない。

こういった事情から、本来『甲板士官』は『分隊士』と兼任しない方が望ましいのである。

 

記事のまとめ

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日本全国の全ての甲板士官(艦艇及び陸上部隊)から

「おーい、それがメリットかーい」

というツッコミが聞こえてきそうです。(えへへ)

しかし、甲板士官を経験することによって得られる経験値ってマジ半端ないと思う。

A幹は任官して3配置目には『〇〇長』とかになってしまうので、1~2年目しか甲板士官を経験するチャンスがないのが厳しいところ。

めでたく(不幸にも?)甲板士官を拝命したら

「今しか経験できないことだ」

と割り切ってしっかり取り組んでみて欲しいと思う。

 

朝の総員起こし前に起きて(あるいは帰艦して)艦内を見回ることは大変だけど、1年間毎日続けたら見えてくるものはたくさんある。

母港に停泊中だったら、通勤してくる乗員の姿を見て

『〇分隊の〇〇は毎朝〇時ごろ帰艦している』

『〇分隊の〇〇はいつも二日酔いだ』

『〇分隊の〇〇はいつも元気にあいさつをする』

『〇分隊の〇〇は最近どうも元気がない』

などと乗員の表情や言動を観察していて気付いたことがあれば、所属分隊長(士)にそれとなく伝えてあげることも大事な役目。

心に問題を抱えている人は必ず何かしらのサインを出しているので、そこに気付いて早めに対処できれば小事の内に問題を解決できることもある。

一見雑用係のように見える甲板士官にはそういった人間としての経験値を上げるための要素に溢れていると思う。

だから、大変だとボヤいてばかりいないで目線を上げて頑張って欲しい。

数年の後に我が身を振り返っった時

「あぁ、甲板士官やらせてもらってホントに良かった」

と感謝する時がきっと来ることをここに保証するものである。

 

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