fishing-boats-418827_640

 

中級水雷課程カテゴリーは、実習や研修の話しかありませんね。

今回もその中の一つ『海難審判所研修』です。

『海難審判所』といっても、海や船に関係する仕事をしている人でない限り、その存在すら知らないのではないでしょうか。

Wikipediaによると

海難事故が発生した際に、海難審判法に基づき行政審判である海難審判を行う国土交通省の特別の機関。海難審判を通じて海技士、水先人、小型船舶操縦士に対する懲戒処分を行い、海上交通の安全を確保することを目的とする。

要するに船舶の交通事故を裁く場所ですね。

私たちが研修したのは、広島地方海難審判所でした。

 

陸上と違って、海上には目に見える『車線』が存在しないため(重要航路には航路標識などが設置されているが)、ともすれば無法地帯と化す恐れがあります。

それを規制するために、海上交通3法と呼ばれる法律が定められています。

『海上衝突予防法』

『海上交通安全法』

『港則法』

の3つです。

 

Sponsored Link

 

護衛艦を操艦する運航幹部は、部内で実施される海技試験を受験し、運航1級という資格(部内限りの資格)を取得いたします。

車を運転する時に必要な運転免許証ですね。

この、海技試験は『航海』『法規』『運用』『英語』という科目があり、この『法規』で問われる内容が先の『海上交通3法』なのです。

船舶を運航する上で必須の交通ルールなのです。

 

さて、海難審判所の研修に話を戻します。

その日行われていたのは、漁船とタンカーの衝突案件についてでした。

当事者双方からの証言が聴取されていたのですが、漁船の船長の証言を聞いたとき、我々に衝撃が走りました。

以下、簡略化して紹介します。

審判官:「貴方は、〇〇の時には〇〇しなければならないという法規について、認識していますか?」

船  長:「はぁ~、なんだそりぁ、聞いたことないぞ」

審判官:「・・・(絶句)、いや、あなた船舶免許持っていますよね。海事法規に書いてあるでしょう?」

船  長:「そんなもん知るか、免許は漁協がくれたわい!」

審判官:「えっ!?」

代理人:「審判官!休廷、休廷をお願いします!」

血相を変えて代理人(弁護士に相当)が船長を外に連れ出していきました。

しばらくして、廊下から

代理人:「あんなこと言っちゃダメでしょ!」

船  長:「だって、本当のことだからしょうがないだろう!」

という、怒声が響き渡っていました。

 

この間、わずかに15分程度だったでしょうか。

海難審判所研修はあっさりと終了することになりました。

しかし、ものすごく有意義な研修でした。

私の経歴上、てしお水雷長、ちくま航海長と約2年に渡って護衛艦の運航に従事してきましたが、漁船や遊漁船の動静については少なからず疑問を抱いていました。

「どうして、そんな動きをするのか?」

といつも悩んでいましたが、この日すっきりと解決いたしました。

『海上に存在する全ての船舶が法規を正しく理解しているとは限らない』(しかも、無免もいる)

ということなのです。

 

海上自衛隊の艦船は、全ての船舶が法規を正しく理解しているという『性善説』に基づいて艦を運航しています。

このため、不法不当に近接してくる小型船舶の存在には頭を悩ませているのです。

注意喚起のため、やむを得ず吹鳴した汽笛信号に対しても、

「自衛隊に威嚇された」

などと難癖をつけられるので、ギリギリまで我慢するのです。

 

最近は護衛艦の大型化やステルス化に伴い、超近距離の小型目標の動静が視認しにくくなってきています。

どうか、むやみに近接しないで頂きたいと切に願うものであります。

『護衛艦の鼻先を突っ切れば大漁だ!』

などというジンクスは、全く根も葉もない嘘ですので、そのようなものを信じないようお願い申しあげます。

 

Sponsored Link