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読者さんからリクエストがありましたので、職種に対する私なりの見解を述べたいと思います。

幹部候補生学校や遠洋航海中を通じて、一番の関心事は

「自分が将来どの職種に配属されるか」

ということに尽きると思います。

自分もまさにそのとおりでしたので(笑)

しかし、実際に職種が決定して配属されてみると、実はそんなにたいした問題ではなかったということに気が付きました。

海上自衛官として定年までの長いスパンで考えてみれば、職種(特技)に特化した配置よりも共通配置の方が多くなると分かったからです。

 

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希望職種でなければ退職?

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特にパイロット希望者に顕著な考え方ですが、

「パイロットになれなかったら自衛隊を辞める」

と宣言している者は数多く存在していましたし、実際にパイロットになれなかったことを理由に退職した者もいました。

彼らの目標(目的)はあくまでも『パイロットになること』であって『海上自衛官になること』ではなかったからだと思います。

個人的にはこの考え方について否定も肯定もしませんが、本人にとっても海上自衛隊という組織にとっても大きなリスクであることに間違いはないでしょう。

本人にとっては約2年間という年月を無駄にしてしまうことになるでしょうし、海上自衛隊にとっては人材養成に要した時間と費用が無駄になってしまうからです。

 

『パイロットになること』を最優先する人にとっては、一般幹部候補生を選択することは得策ではないと考えます。

やはり一番良いのは民間パイロットを目指す道でしょうし、自衛隊のパイロットを目指すのならば高校を卒業後に航空学生を検討した方がパイロットになれる確率が高いと思います。

忘れてはならないことは自衛隊のパイロットも決して『大空を自由に飛べる』わけではないということです。

 

職種の分類

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職種の分類方法はいろいろありますが、オーソドックスに大職域で分類してみたいと思います。

なお、医科歯科や音楽については一般幹部候補生の選択肢外なので省略します。

 

艦艇用兵

海上自衛隊と聞いて最初にイメージする職種がこれでしょう。

いわゆる『艦艇(ふな)乗り』という職種ですが水上艦艇と潜水艦に大別されます。

水上艦艇要員は遠洋航海が終了すると部隊に配属され、3ローテーション(砲雷科、船務科、機関科)を終了したのち、航海長を経て中級課程に進み特技が決定します。

艦艇用兵、射撃、水雷、船務、航海、機関、機雷掃海などの中級課程がそれです。

その中から更に通信、気象海洋、法務などより専門性のある職種に進む場合もあります。

この場合、一般大学の修士課程等で学ぶことになります。

給料を貰いながら勉強できることは素晴らしいことですが、最初から一定以上の成果を期待されているので物凄いプレッシャーがかかりそうです。

 

選択した特技によって、将来の配置に差が出ないよう配慮されていることはあまり知られていません。

例えば機関に進んだ者でも艦長になれるような配慮がされているということです。

もっともこれはオリンピックや国体の強化選手と同じ考え方で、ある程度将来のことを見越したう上で予め配員されているもので、いわゆるモデルケースという考え方です。

これは何も艦艇だけに限ったことではなく全ての配置において言えることで、それぞれのトップになる人間は予め考慮されて配員されているのです。

それはこの後に述べる後方関係に顕著な傾向だといえるでしょう。

誰が見ても用兵に向いているような同期が経理補給や艦艇装備、航空整備に将来のトップ要員として配置されています。

 

潜水艦については何かと秘密のベールに包まれており、また潜水艦乗りは非常に口が堅いので外部からは実情が分かり難い部隊だとといえます。

一つだけはっきり言えることは、我が国の潜水艦部隊は技量装備ともに世界最高水準にあるということです。

水上艦艇水雷幹部として、我が国の潜水艦とやりあって勝てる自信はありませんでした(笑)

一般的に勤務環境が厳しいといわれる水上艦艇に比べても遥かに劣悪な勤務環境にあるはずなのに、士気が高いというのは幹部乗員を問わず個々人の意識の高さによるものだろうと思料します。

そういう意味では潜水艦乗りこそ海上自衛隊における真のエリート部隊といえるのかもしれません。

 

航空用兵

大別すると固定翼と回転翼に分かれます。

固定翼は主としてP3-Cの操縦士(パイロット)、戦術航空士(TACCO)などになります。

回転翼は操縦士のみでTACCOはありません。

詳細は海上自衛隊教育航空集団のリンクでご確認ください。

私は艦艇幹部だったため、固定翼の人達とはあまり接点がありませんでしたが、回転翼の人達はDD(汎用護衛艦)に搭載されることで接点がありました。

航行中の護衛艦の飛行甲板に発着艦する技術は、当たり前のようにやっていますがとんでもない曲芸だと思います。

洋上はいつも穏やかな状況だとは限らず、荒天時には強風とともに波うねりで飛行甲板は縦横斜めに動揺しているのですから。

一般幹部候補生出身のパイロットは、高校卒業以来ずっと飛び続けている航空学生出身者と技量で比較されるのでつらいものがあるのではないかと想像します。

最終的には本人のセンス次第なのでしょうが、ビークル系はやはり乗った時間と乗り始めた時期が影響するものだと思います。

自転車、バイク、自動車等の運転について想像してみれば分かり易いですよね。

これに対して艦艇の操艦については、幹部になってから一斉にスタートなので部内出身者に対して不利になることはありません。

 

艦艇装備

最初の1年目は艦艇に配属されて、2年目から専門の課程を経て部隊に配属されるようです。

その後は船体系や武器系などに分かれて研究開発などの業務に従事するようですが、極めて理系色が強いということもあって最初から選択外だったためほとんど予備知識がありません。

参考のため防衛省技術研究本部のリンクを張っておきます。

 

航空整備

こちらもほとんど予備知識がないので、海上自衛隊 第3術科学校のリンクを張っておきます。

遠洋航海終了後は艦艇部隊と航空部隊では勤務地がことなるので、同期会でもほとんど会うことはありませんでした。

中級以降の共通配置になると再会することもあるようです。

 

経理補給

一時は真剣に検討した職種です。

そのメリットは艦艇部隊、航空部隊の両方で勤務できることです。

また、どんなに優秀な人員装備を持っていても、綿密な補給計画がなければ作戦遂行はできないというのが古代から現代に至るまで普遍的な事項だからです。

人間が戦う限り食糧は不可欠ですし、各種装備武器を運用するためにはどうしても燃料弾薬の補給が必要です。

この基本を見失ったとき、どんな優秀な人材がいてもどんな高機能な装備武器を有していても敗北は必至なのです。

私は指揮官になる者には3ローテーションでなく、経理補給を含めた4ローテーションこそが必要だと考えていました。

少しでも経理補給の概念を理解していれば、先の大戦で経験した杜撰な補給計画に基づく作戦計画など実行されるはずがないと確信していたからです。

 

経理補給の者も最初の1年目は艦艇で勤務します。

その後、専門課程に進んで護衛艦の補給長などでもう一度艦艇で勤務したりします。

実際には護衛艦の補給長はなかなか大変そうなのですが、航海中のWATCH(当直)がないというのは魅力的でしたね。

同期の補給長は食事の準備などで、調理員と一緒に芋をむいたりして楽しそうでした。

 

施 設

かなりレアな配置ですが、同期に1~2名の配員があると思います。

勤務実態は不明ですが、同期の話では官舎の新設なども手掛けていたようで

「そんなこともやるのか」

と感心した記憶があります。

 

警 務

自衛官の犯罪等に関して取り締まるいわゆるMP(ミリタリーポリス)的な存在ですが、現在自衛隊には軍法会議が存在しないのでその権限は極めて限定的だといえます。

自衛隊が国軍になるためには、警務隊を憲兵隊にして軍法会議を整備することが不可避となります。

警務隊は音楽隊とともに定年が60歳というのが特徴的です。

最初の1~2年は艦艇で勤務することになっていました。

 

記事のまとめ

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最初にもお話しした通り、どの職種に就くかはそんなに重要な問題ではありません。

海上自衛隊の幹部として勤務することを第一に考えれば、そんなに悩む問題でもないはずです。

とはいえ、やはり艦艇部隊の勤務形態は一般的な公務員や会社員のそれとは大きくことなっており、制約事項だらけなので敬遠されるのは致し方ないのかもしれません。

にも関わらず主要部隊として員数確保の要求が高いため、本人希望とのミスマッチが生じやすいところに問題があるように感じます。

どの職種にも一長一短は必ずありますから、職種が決まるまでは自分の学ぶべきことをしっかりと学ぶという姿勢が大事だと思います。

また、『職種や配置は命のまま』といういい子(海幕補任班視点で)にはきっとご褒美があると思います。

これは自分の配置を振り返って見ると、結果的に恵まれた環境での勤務が多かったことから確信をもって言えることです。

『可愛げのある奴』が優遇されるのはどんな社会でも共通事項なのです。

 

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