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停泊中の通常業務において、書類作成に追われる様を自嘲した言葉です。

海上自衛隊という組織は、特別国家公務員でありますから、日常の儀式から大規模な演習に至るまで、全ての行動は根拠法規に基づいた命令文書によって実行されるものです。

 

もう少し具体的に、このブログにも度々登場する週間予定表を例に説明します。

週間予定表は、航泊を問わず艦の1週間の予定について示されるものです。

文書起案者は概ね通信士が担当し、月間予定表などを参考に現時点で判明している予定を書き入れ『週間予定表(案)』を作成します。

そして、士クラス、科長クラスに合議してもらって、最終的には艦長の決済を頂きます。

合議してもらった人にはサインもしくは押印してもらうので、『スタンプラリー』みたいな感じですね。

内容について加筆されたり、誤字脱字を修正されたりするので、当初は全面真っ赤に(修正は赤字で行い、修正者の訂正印を押印する)なって原型を留めないことが多かったです(汗)

これは修正されたプロセスを残すことが大事であるからです。

パソコンやワープロが普及していなかった時代は、この状態で庶務に渡せば清書して、各部に配布してくれたそうですが、現在は自分で清書して発刊番号を取るまでが仕事です。

パソコンの普及が初級幹部の仕事量を増やしている悪い例です。

 

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『青年士官は青天井』と言われるように、初級幹部にとって必要なのは各部で作業している乗員の様子を見て、現場感覚を磨くことにあります。

気候や天候の影響をもろに受けながら艦外で作業する乗員の心情とはどういうものか、そういう感覚を身に着けることこそ初級幹部のあるべき姿なのです。

しかしながら、期限の迫った文書処理案件が蓄積してくると、どうしても日中から士官室でパソコンにかじりつくことが多くなってしまうのです。

これが、ペーパーネイビーの弊害で、現場の事を何も知らない頭でっかちな幹部の出来上がりです。

パソコンをいじっているとなんだか仕事しているように自分でも錯覚してしまいますが、それは決して仕事の本質ではないのです。

 

話を元に戻しましょう。

文章の合議をお願いすると、自分の所掌に関する部分だけチェックする人もいますし、誤字脱字や改行スペースまでチェックしてくれる人もいます。

その人の性格や職務によって異なります。

最初のころは

「何でもいいから、早くサインだけしてくれないかなぁ」

などと不埒な考えを持っていましたが、本当はしっかりチェックしてくれる人こそ有難い存在なのです。

ですが、艦長決済に至るまでの時間を想像すると途方に暮れるのでした。

 

 

人間は学習する生き物ですから、早い遅いの個人差はあっても、いずれ効率的な文書処理のためにどうするべきか、コツを掴めるようになります。

私が体得したコツは以下の通りです。

1 早めに起案して寝かせておく。

何だかウィスキー作りみたいですが、文章を作成していきなり持ち回りを始めるのではなく、2~3日引き出しに入れて寝かせておくのです。

時間が経過して、改めて自分の作成した文章を見ると客観的に見ることができるので、人から修正されることが少なくなります。

これは、現在このブログを作成する上でも大変に役立っているテクニックです。

常に20~30の下書きを寝かせておいて、時々加筆してはまた寝かせておいて、タイミングを見て公開しているのです。

これを継続するには、先を見越した早め早めの対応が必須です。

仕事に追いかけられるのではなく、仕事を追いかけるようになれば、なんでも余裕を持って対応できます。

 

2 合議に回ることを士官室朝礼で宣言する。

だいたい士クラスの合議が終了した時点で、

「本日、週間予定表について各科長合議の後、艦長決済をお願いいたします」

と宣言することによって、スムースに事が進みます。

これを宣言することによって、外出予定のある人なども

「先に見ておこうか?」

と合議に協力してくれます。

合議が終了しない限り(スタンプが欠けていると)、艦長に決裁をお願いできませんから、この点は非常に重要なことです。

根回しと情報の共有ということですね。

 

3 根拠文書は全て持参する。

何事も根拠なしには始まりません。

これを体得することは、初級幹部の重要な課題なのです。

予め質問される内容を調べておいて、根拠文書を持参し、記載箇所には付箋を貼っておく。

こういうことがしっかりできるようになると、

「ああ、こいつも大分仕事のやり方が分かってきたな」

と判断されるようになり、スムースに合議が進みます。

 

改めて文章にしてみると、簡単なことなのですが、これを体得するまでには随分と苦労しました。

自分の貴重な時間を割いて、根気よく指導して頂いた諸先輩に今更ながら感謝する次第です。

どんなことでも下積みこそが重要なのです。

 

現在、こうやってブログを書くようになって一番感じるのは、

「誰か文章や誤字脱字をチェックしてくれないかなぁ」

ということです。

自分一人で起案(下書き)して、チェック(合議)して、決裁(公開)していると、後でとんでもない誤字脱字を見つけ赤面します。

まあ、こっそりと修正しておりますが・・・

そんな時、あの合議システムが無性に懐かしくなりこの記事を書いてみました。

 

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