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今年も台風情報が報道されるようになりました。(まだ5月なのに)

夏から秋にかけて日本周辺に影響を及ぼす台風、護衛艦乗組員にとって避けようのない試練です。

台風の接近に伴い艦内は、

「いつ台風避泊するか」

という話題で騒然としてきます。

岸壁に係留したままでは、艦や岸壁施設に損傷を与える恐れがあるため、あらかじめ近隣の避泊錨地でやり過ごすというのが慣例だからです。

そして、なぜか台風は土日に直撃することが多いのです。(これがまた代休を増やすことになります)

 

台風の接近に伴い、避泊が決定されると護衛艦乗員は、

「艦に帰る」

といって艦に戻って来ます。

自宅(家族)がどんな状況になろうとも・・・

これが奥様方には大変評判が悪いのです。

そもそも『帰る』という表現に問題があるようですが、護衛艦乗組員は艦内居住が前提でありますから『帰る』という表現こそが正しいのです。

 

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自衛隊は民間船舶に比べて、台風避泊の決定時期は極めて早いです。

民間はギリギリまで商売したいでしょうし、自衛隊は事故の未然防止こそが第一ですから当然の道理でしょう。

台風の気配すら感じない時期に母港を出港し、静かでガラガラに空いている錨地に錨泊、荒天準備を済ませ台風の接近、そして通過を待ちます。

ですが、いよいよ台風が近づいてくるにつれて、民間の船舶も後から後から入港してきます。

そして、こちらの近傍にお構いなしに錨泊し始めます。(カンベンシテクダサイ!)

それだけならまだしも、ロクに錨鎖把駐力の計算も行わず適当に錨泊する(憶測ですが)ので、風が強くなると簡単に走錨してしまいます。

走錨した船が自艦に接近してきた場合、選択肢は2つです。

捨錨して出港するか、揚錨して出港するかです。

 

捨錨というのは、文字通り錨を切り離して出港することをいいます。

入港した際に捨錨準備(錨を切り離すための仕掛け)を済ませてありますので、緊急時には速やかに出港することが可能です。

ですが、捨錨した場合は後日改めて錨地に戻ってきて、錨を捜索し回収しなければなりません。

後日の捜索を容易にするため、目印となる浮標(ブイ)を付けておくのですが、いずれにしても錨の回収は困難な作業です。

台風通過後の行動予定に余裕がない場合など、できれば捨錨したくないというのが本音なのです。

 

揚錨して出港するのは通常の出港と同じですが、民間船舶が走錨しているということは、それだけ天候状況が悪化しているということなのです。

そのような状況下では、揚錨機だけで錨を巻き上げることはできませんので、エンジンを使って艦の位置を保ちながら作業する必要があります。

吹き付ける雨風、波やうねりによって艦に巨大な力がかかっているからです。

この荒天時における揚錨出港という困難な作業経験が過去に一度だけあります。

それは、「てしお」水雷長の時のことでした。

台風避泊その2へ続く 

 

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