africa-1170179_640

 

海上自衛隊幹部候補生学校に在校中は各種の点検を受けることになります。

 

分隊点検、短艇点検、武器点検、被服点検等その種類は実に多岐に渡ります。

 

点検の内容は文字通り様々ですが、共通していることは点検を受ける側(候補生)が整列し、その列中を点検官が練り歩きながらランダムに質問を投げかけるということです。

 

この記事はそういった各種点検の正しい受閲方法について考察することを目的として記述されています。

 

なお、今回の表紙は質問を受ける候補生(草食獣)と獲物を物色する点検官(肉食獣)を分かり易くイメージしたものです(笑)

Sponsored Link

受閲者のあるべき態度

点検の種類に応じて質問される内容は概ね予想できます。

 

例えば『短艇点検』であれば、短艇(カッター)に関することや索具に関すること、または短艇上げ下ろしの運用作業に関する内容などです。

 

また、これに対する解答方法は口頭だけでなく実演(実技)も含まれます。

 

言うまでもなく予想される内容を全て記憶し(あるいは実演可能な状態にし)、点検当日を迎えることが最も望ましいワケです。

 

しかし、『点検』という一種独特な儀式の雰囲気にのまれ、十分にその実力を発揮できない状況も予想されます。

 

点検官から質問されることで頭が真っ白になり、『あわあわ状態』になったり、『無言状態』に陥るというのがその最も望ましくない姿です。

 

この事態を回避するために分隊長からある秘策(自衛隊特有の裏技)が授けられることになりました。

伝家の宝刀

その秘策とは質問に対して

 

『ハイッ!忘れましたっ!!』

 

と元気一杯に答えることでした。

(悪びれることなく元気一杯というところがミソ)

 

もちろん、これは最終手段(緊急避難)ともいうべき性質のものであることは言うまでもないのですが、私や私と近似の周波数を有する不良候補生にはひっ迫した状況を打開する画期的な手法として心に響くものがありました。

 

そして、ある種の確信をもって『点検対策模範解答集』を静かに机にしまい込んだのです。

 

ご存知のように幹部候補生は分刻みの忙しい毎日を送っています。

 

限られた時間の中で『やること』も『覚えること』もそれこそ数えきれないほどあるワケです。

 

それら全てを律儀にこなす優秀な者(能力及び性質)も当然存在します。

 

しかし、私のような不良候補生(能力及び性質)は限られたリソース(記憶領域)を適切に配分する必要があるのです。

 

少数の守備兵で広大な陣地を守り抜くためには、重要地点に偏った配置することもやむを得ないというのが用兵の理ですから。

(いつもながら言い訳の理論武装は完璧!)

もう一つの武器

ところでその『伝家の宝刀』を抜く手前の段階で、もう一つ効果的な技術が存在しています。

 

それは『気合の入った表情及び自信に満ち溢れたオーラ』です。

 

点検官というのはどうしても『自信なさげな候補生に質問したくなる習性』を有しているものです。

 

つまり、その反対に『私に何でも質問して下さい(キリッ)』的な自信に満ち溢れた候補生は質問されにくいということになります。

 

しかし、実際問題としては何の裏付け(=必要な基礎知識)もない状態でこれだけの自信に満ち溢れたオーラを放つのは至難の業です。

 

・・・ですが、幸いに私はその『根拠のない自信』を演じきる才能に恵まれていました。

 

そうもはやこれは才能というべきもの。

 

なんといっても在校中の各種点検において一度も質問を受けた記憶がないのだから(笑)

 

それはある意味『プレゼンスというものの本質』を正確に体現しているのかもしれませんね。

(・・・いや、調子に乗り過ぎました。ゴメンナサイ)

そして点検当日

さて、準備万端整って点検に臨む私の脳内は、当日の天候同様にすっきりと晴れ渡っていました。

 

つまり、必要な知識は一片も詰め込まれていないという意味において『快晴』だったワケです。

 

頼みとする武器は『気合の入った表情(ブラフだけど)』『忘れましたというセリフ』の2つだけ。

 

やがて点検が始まり、学校長を始めとする上級幹部が列中を進んで来られます。

 

私は心の底から『なんでも聞いてください!』という気力を充満させて待ち構えます。

(自分を信じる力ってスゴイ)

 

仮に少しでも『質問されてらどうしよう』などと考えてしまったら、それはたちどころに表情に現れ質問を受けてしまったことでしょう。

 

サバンナの王者であるライオン(肉食動物)は、インパラ(草食動物)の群れの中にいる弱った個体を絶対に見逃さないのです。

元気があってよろしい

幸いにというべきか残念ながらというべきか、『気力に満ち満ちた私』が質問を受けることはありませんでした。

(その伝説を保ったまま、やがて江田島を卒業)

 

しかし、私のすぐ近くで実際に『伝家の宝刀』を抜いた者がいたのです。

 

点検官の質問を受けた彼は間髪入れずに

 

『ハイッ!忘れましたっ!』

 

と見事に言い放ちました。

(ホント羨ましいの一言に尽きます)

 

点検官は一瞬面喰った表情の後でニヤリと笑い『元気があってよろしい』と言い残すとその場を立ち去っていかれました。

 

虎口を脱したかに見えた彼でしたが、安心しかけたその直後に音もなく近づいてきた点検官補佐から

 

『こりゃぁ、少しは思い出す努力をしてから答えんかっ!』と背後から膝カックンを食らっていました。

 

・・・そういう『茶目っ気』こそが海上自衛隊の伝統的な(愛すべき)気風ですね。

記事のまとめ

Sponsored Link

そういえば丁度この時期は新しい幹部候補生が『仮入校』している頃だなぁ考えていたら、過去の懐かしい出来事が脳裏に浮かんできました。

 

その中から一つのエピソードをこうして記事にしてみた次第です。

 

しかし、散々書き散らしておいて言うのもなんですが、良い子(マトモな候補生)の皆さんは決してマネしないようにして下さいね。

 

やはり、覚えるべきことは覚えるべき時期にキチンと覚えることが重要ですし、後々の苦労を確実に少なくしてくれます(笑)

 

実際に今まで習得を怠っていた全ての知識を学び直す必要性が生じたため、部隊配属一年目は目が回るほど忙しかったという記憶があります。

 

もし、マネをして教官に咎められる事態が生起しても、決して『航跡』というブログに書いてあったなどと漏らしてはいけません。

(同期会での私の立場が著しく悪くなりますから)

 

今回の記事の中に一応教訓的なものがあるとすれば

  • 戦いには時として『はったり(ブラフ)』も必要である
  • 『はったり』しかないことが露呈すると悲惨な結果を招く
  • 緊迫した状況においてこそ『茶目っ気』が必要である
  • 『茶目っ気』も限度を超えると『悪ふざけ』になるので要注意

ってことでいかがでしょうか?

 

それでは、本日もここまで記事をお読み頂きましてありがとうございました。

 

また、次回の記事でお会いしましょう。

Sponsored Link