cry-62326_640

 

2015年も残すところ最後の1日のみとなりました。

 

人事担当幹部の皆さん、部下の勤務評定は書き終わりましたでしょうか?

(腱鞘炎にはくれぐれも気をつけて下さいね)

 

『今年の業(ごう)は今年の内に』

 

というワケで2015年を気持ちよく締めくくるためにも、最後に海上自衛隊幹部自衛官の勤務実態の核心に迫るエントリーを送りたいと思います。

 

ターゲットはタイトルに示すとおり、日常勤務が忙しすぎて『絶叫したい』と考えている幹部の皆さんです。

 

それでは、早速まいりましょう。

Sponsored Link

そもそも一般的尺度で幹部自衛官を捉えると恐ろしく割に合わない職業である

最初からズバリ核心に迫ることを申し上げると、海上自衛隊(艦艇部隊)の幹部という仕事は実に割に合わないモノだといえます。

 

試しにそのマイナス要素を片っ端から列挙してみましょう。

  • 業務量が異常に多い(個人が定時にこなせる量を越えている気がする)
  • 故に残業が増える(上司が在艦している限り帰宅できないことを含め)
  • 故に休日も出勤する(正当な理由のない出勤ですね)
  • 幹部としての職責は極めて重い(権利は少なく義務は多い)
  • 故に自分を律しているだけではダメ(自分のことはできて当たり前)
  • 部下の起こした事故の後始末が大変(本来業務も全停止となります)
  • 航海中の運航者としての責任が重い(海難事故は将来に及ぼす影響大)
  • 哨戒長としての責任が重い(生殺与奪権を握っているという重さ)
  • 哨戒長は(多分今でも)2配備である(もちろん日中はフルに訓練参加)
  • 出港日数が増加する傾向にある(海外情勢の変化に伴う任務増加)
  • しかし入港しても代休は取れない(書類が段ボールに山積みで運ばれてくる)
  • しかも転勤時に代休は持ち越せない(金額にすれば楽に1か月の給与分を越える)
  • 部下たちは入港したら代休処理でほとんど不在(用事のある海曹士に会うのは一苦労)
  • 同じ幹部でも暇そうにしている人間もいる(配置や階級など様々な要素によって)
  • 仕事はやればやるほど増えていく(能力のない人間に仕事は割り振られない)
  • 上司が仕事を丸投げにして帰ってしまう(最低限の職責は果たしてほしい)

・・・まだまだありそうですね?

 

退職して10年以上経過している私がざっと思いついただけでもこれだけのマイナス要素が出てくるくらいなので、現役幹部の悩みは更に深いと思います。

 

とにかく航泊を問わず業務量が多いですから残業や休日出勤で補う必要がありますし、代休などを取ることが許されるような雰囲気ではありません。

(本来代休とは幹部曹士を問わず、絶対に消化させなければならないモノなのですが)

 

こういうモロモロのことを全部ひっくるめて時給換算すると恐ろしく安い単価になってしまいます。

 

それが何となく『割に合わない』と思える由縁なのでしょう。

 

全ての原因は『やらねばならないこと』が先に決まっているということ。

 

それはもっと大きな視点で考えてみれば分かるのですが、四方を海に囲まれた我国の海上防衛を限られた予算とたった4万5千人の海上自衛官で達成しようとしているところにそもそも無理があるわけです。

 

現在生じている大きな歪は大部分がそこに端を発しているということを国民の皆さんにも理解して頂ければいいなと思います。

 

予算と人員を増加すれば解決できる問題は実に多いのですが、それは口が裂けてもいえないお約束なので。

 

実際のところ現場はかなり疲弊しているのですが、それを辛うじて支えているのは『矜持というやせ我慢』だといえるでしょう。

視点を変えれば逆境を楽しむこともできる

散々マイナス要素を並べ立て煽っていながらいうのもなんですが、これらは全て幹部自衛官としての職務を『一般的な仕事』と比較することで生じる不満だといえるのかもしれません。

 

それは『自分が提供するモノ(勤務時間、果たすべき職責など)』と『自分が享受するモノ(給与、社会的身分の保証など)』の相対的な関係によって決定されるものです。

 

もっと簡単にいえば『楽で給料が高ければ良い仕事』で『忙しい割には給料が安ければ悪い仕事』という分かり易い価値観のことです。

 

私も初級幹部の頃はどちらかというとマイナス要素にばかり注意が向いてしまい、何だかやるせない思いを抱いていたことも少なくありません。

 

『割に合わない』とか『こんな仕事やってられない』といった感情ですね。

 

けれどこういうマイナス要素であっても、視点を変えることで逆にプラスに転じることに成功した経験を持っているので、その方法についてお伝えします。

 

別に私が特別に『ヘンタイ』だから逆境を楽しめるようになったというワケではなく、意識して視点を変えた結果そうなったという点に注目して下さい。

 

要するに全ては自分の主観によって意識を変えられるということなのです。

 

まず根本的な『業務量の多さ』という点についてですが、これは『業務量=経験量』に置き換えてみて下さい。

 

人間に与えられた時間は1日に24時間となっており、これは全ての人間に等しく与えられている数少ない条件の一つです。

 

違うのはその同じ24時間をどれほど有効に使えているかということなのです。

 

単純にAさんという幹部が毎日8時間働いて10年を過ごすとします。

 

もう一人Bさんという幹部が毎日16時間働いて同じく10年を過ごしたとすれば、BさんはAさんの20年分の経験を積んだことになります。

 

私は『経験の量と質こそが人間の価値を決める』という基本理念を持つに至ったので、Bさんの人生の方により価値を感じます。

 

次にもう少し具体的に航海中の哨戒長勤務を例に考えてみるとしましょう。

 

通常の群訓練などにおいて日中はフルで訓練に参加して、夜間は『2配備』で哨戒長として立直していました。

(艦の哨戒配備が3配備であるにもかかわらず)

 

護衛艦での勤務経験がない一般の方にはちょっと分かり難い例かもしれませんが、連続して睡眠が取れる時間がほんの数時間でしかないということが想像できるでしょうか?

 

実際にこの状態で訓練に参加すると、私の場合は出港から3日後には既に意識がモウロウとしていました(笑)

 

そういう極限の状態で通常の訓練をこなすことによって、海上自衛隊演習(海演)など実戦形式の演習が楽に思えるようになるのです。

 

学生時代に部活をやっていた方であれば分かると思いますが、毎日の練習を極限まで実施しているからこそ試合本番が嘘のように楽に感じるのと同じ理由なのです。

 

まして練習の時にできなかった技などが本番にできるワケがありませんよね。

 

全てはそこに繋がっているのだと思えば、現状の過酷な環境にも納得がいくワケです。

 

また『哨戒長』にはもう一人交代してもらえる幹部がいますが『艦長』には交代要員はいません。

 

自分よりも遥かに重い職責に耐える『艦長』の存在は、哨戒長の過酷な勤務に臨む上で大いに勇気を与えてくれるものでした。

 

最後にもう一つ『部下である海曹士は何だか代休ばかりでいいなあ』と思う件について考えてみましょう。

 

これは実際のところ本当に羨ましかったんです(笑)

 

でもある時から考えが変わりました。

 

それはやはり分隊長になった時に、自分の部下が自分にとって『手であり足であり血であり肉である』ということが実感できたからなんです。

 

いくら幹部だ分隊長だといっても、所詮幹部なんて自分一人では何にもできないワケです。

 

それを『撃て~!』なんて号令するだけで実際に弾が出るようにしてくれるのは全て部下の働きなのです。

 

このことが実感できてからは『部下が代休をきちんと消化できて、楽しく勤務している姿をみること』に喜びを覚えるようになりました。

 

良く考えてみて下さい。

 

部下が楽しく勤務できているということは『自分自身の血や肉など体の一部』が良いコンディションを保っているということに他ならないじゃないですか。

 

これは多分、親が子を想う気持ちと寸分変わらぬものだと理解しています。

(出来の悪い手のかかる子ほど可愛いという部分も含め)

記事のまとめ

Sponsored Link

最初に挙げたマイナス要素の全てに対し一つづつ理由をつけて説明することも可能ですが、今回はあえてそれをやりません。

 

なぜなら、一見マイナス要素だらけの環境をどうすればプラスに変えられるかという視点を自分自身で考えて手に入れて欲しいからです。

 

そうやって自分自身で導き出した答えは、貴官の今後の勤務だけでなく人生そのものに大きな影響を与えることができると断言できます。

 

間もなく迎える2016年は是非新しい視点を手に入れて、新鮮な気持ちで勤務に励んで頂きたいと願っています。

 

逆境こそ己の経験値を高める絶好の機会だと捉え積極的にリスクテイクしてみて下さいね。

 

それでは本日もここまで記事をお読みいただきましてありがとうございました。

 

また、次回の記事でお会いしましょう。

Sponsored Link