a0028694_16393180

 

海上自衛官にとって『上陸』とは、なんとも例えようのない甘美な言葉です。

そのたった2文字の漢字には、大航海時代の新大陸発見にも通じる歓喜の感情がぎっしりと詰まっているのです。

 

端的にいってしまえば、業務終了後に外出(または帰宅)するだけのことですが、艦という鉄の牢獄に監禁された状態からの解放感は一般の人にはなかなか理解してもらえないかもしれません。

特に母港以外の寄港地での『上陸』は、そのこと自体が冒険なのです。

 

海上自衛官として長く勤務していると、初めての街でもどこに行けば楽しいことに巡り合えるかという嗅覚が敏感になってきます。

船乗りの本能というべきものでしょうか?

ちなみに私は自衛隊を退官した今でも、仕事の都合で出張などで地方に行き、飲食のために外出することを本能的に『上陸』といってしまい、同僚(民間人)などにけげんな顔をされます。

 

Sponsored Link

 

しきたり

護衛艦では、上陸する際には当直士官に対し「上陸願います」と声をかけるのがしきたりです。

自分が上陸して楽しめるのは、当直士官が留守を守っていてくれるからという感謝の気持ちを込めてそのようにいいます。

また、帰艦した際もそれが常識的な時間であれば士官室に行き、「上陸ありがとうございました」とあいさつします。

船乗りの古き良き習慣の一つだと思います。

 

自分が当直の時に困るのが、寄港地で司令や艦長がいつまでも帰艦しないことです。

「先に休んでいていいから」

などといってくれる指揮官もいますが、そうはいきません。

 

指揮官が帰艦した際は、艦の異状の有無を報告する義務があるからです。

そのあたりの事情を配慮してくれない指揮官だと・・・最悪です。

私は幸いにして良い指揮官に恵まれましたが、中には帰艦時に当直士官の出迎えが遅いと罵倒する不届きな指揮官も存在していたようです。

いわく

「緊張感が足りない!!!」と。

・・・いや、そりゃあんたでしょ。

 

指揮官がそんなに泥酔して、不測の事態が生起したらどうやって指揮するのか?

っていう人もいましたね。

他部隊の指揮官でしたけどね。

 

海上自衛隊という組織の特色として、『酒に関して寛容』というものがあります。

幹部、曹士を問わず酒癖の悪い人間は結構いましたが、常に「まあ、酒が入っていたから・・・」という感じで穏便に済まされるのが不思議でした。

私の個人的な意見としては

「自分を管理できない人間(特に幹部)が、一体他に何を管理できるのか?」

ということに尽きます。

 

もっとも最近では海上自衛官に限らず、民間人も酒癖の悪い人間が多いということが分かってきました。

酒は飲んでも飲まれるな。

上陸は楽しく、スマートに!

 

Sponsored Link