今までの記事で「海上自衛隊の職務は理系要素が強い」と書いてきましたが、実は「英語」が必要とされる場面にも度々直面いたします。
それは、海上自衛隊の成り立ちが旧帝国海軍と米海軍のハーフであるからでしょう。
海軍(海上戦力)というものは、陸軍とは異なり短期養成することは出来ません。
俗に「海軍養成は百年の計」といわれております。
ゆえに、戦後完全解体された陸軍とは異なり、海軍はその影響力(特に人材において)を色濃く海上自衛隊に申し継いでいくことになったのです。
しかし、敗戦の結果として完全に純潔を保って再生できたわけではなく、米海軍の強い影響を受けることになります。
発足当時の装備は米海軍からの貸与が多かったこともありますし、戦術的な思想や用語もNATOの一員として米海軍方式に準拠していることもその顕著な例といえます。
つまり、この時点で英語力は必須であるわけです。
英語が必要な場面
では、どういった場合にこの英語が必要な場面に直面するのか?
私の在職中の例を思い出してみますと
- 遠洋航海など海外での寄港地において
- 外国海軍(米軍以外にも交流の機会はある)との共同訓練など
- インド洋派遣
- 日々の訓練における作戦概要の把握
といった感じでしょうか。
配属された部隊にもよりますが、意外と英語が必要とされる機会は多かったです。
もう少し具体的に見てみましょう。
遠洋航海は、自分自身が実習幹部として行った北米、南米諸国(詳しくは、カテゴリー遠洋航海を参照)、飛行幹部の実習のため行ったグアム&フィリピン方面、53期生を連れて行った環太平洋方面などを経験しています。
各国海軍との交流は、米海軍、オーストラリア海軍及びフランス海軍に対するホストシップに指定され対応しました。
自艦が修理中に連絡士官として、米空母キティホークに3週間ほど拉致監禁派遣されました。
ざっと、こんな感じですね。
私の英語力
こうやって見ると、さぞや語学に堪能なんだろうと誤解を招きそうですが、私の在職中受験したTOEICの最高得点は490点です。
海上自衛隊の幹部はTOEIC450点をクリヤーすることを義務付けられています。(クリヤーできるまで毎年強制的に受験しなければならないので、晒し者になります)
その基準はTOEICスコアの「技術部門」が到達すべきレベルに準拠しているようです。(営業部門だと480点)
民間企業に比べて、その基準は低いものだといえますが、私には結構高めのレベルでした。(最初の試験では300点に到達できず)
実際に、450点を取って試験を免除になるまで5年ほどかかっています。
といっても、TOEIC受験のために事前に勉強する気も、またその物理的時間もなかったので常にぶっつけ本番で受験していたことも要因かもしれません。
もちろん語学習得は自己責任でやるものですから、できないのは自分が悪いのですが、海上自衛隊のすごいところはこんな低語学力幹部の私を気にせず語学力の必要だと思われる現場に投入することです。
まあ、あとは自分で何とかしろってだけなのかもしれませんが・・・
おかげさまで度胸だけは十分に成長し、自分の知っているわずかな英語力で(文法などは無視)強引に意図だけは伝えられるようになりました。
相手はきっと
「こいつ士官(幹部)のくせにでたらめな英語使いやがって・・・」
と思いながら対応してくれたのでしょうけど・・・(汗)
雷蔵 様
イントネーションに関しては、日本語として馴染みのある外来語が特に曲者だと思います。
何度言い直しても理解してもらえません(涙)
別の単語で表現できればなんとか意思を伝えることができますが、相手の許容力次第ということになります。
相手の笑顔が『苦笑い』に変わったら、
「そろそろリミットに近づいているな」
と感じてました(笑)
サンディエゴにいたことがあります。
米海軍の基地ですが、日本にいた時にしりあって海軍さんと結婚した日本人妻が少なからずいるので、神奈川県人会や長崎県人会があり、お付き合いさせて戴きましたが、カタカナ英語っぽい人が多いですが、ちゃんと通じています。
英語は発音より抑揚(イントネーション)で聞き取る傾向があり、発音はカタカナでも通じるようです。
CNNを見ていると、学がありそうな日本人が英語を話すと字幕が付くのをよく見ますが、シリア難民が訛りの強い英語を話していても、不思議に字幕は付きません。面白いものです。