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このブログではしつこいくらいに『海上自衛隊の優秀な人材』について言及しています。

しかし、簡単に『優秀な人材』と言ってしまうと

「やっぱ、優秀な人って子供の頃から頭も良かったんでしょ」

という既成概念に縛られてしまいがちですが決してそうではありません。

 

海上自衛隊の人事育成システムには

『優秀な人はもっと優秀に』

『普通の人でもそれなりに』

(懐かしいフジフィルムのCMを応用してみました~)

育成してしまう強力なプログラムが存在するのです。

今回はそんな人事育成システムの根幹思想について考察してみました。

 

配置が人を育てるという考え方

前回記事では年齢や階級、経験に比べてちょっと背伸びした新配置に就任し経験を積むことによって、その配置に相応しい能力を身につけることができると紹介しました。

ここをもう少し詳しく説明すると

『着任時の自分の実力(知識や経験)』という現実と『その配置に求められる能力』という理想との間にはギャップが存在します。

しかし、それは決して遥か彼方にある手の届かない理想などではなく、努力によってかなえられる範囲の(手の届く)理想なのです。

 

なぜ手の届く理想なのかといえば、過去の護衛艦勤務経験において先輩がどのように勤務していたかを実際にその眼で見ているからです。

それにより自分がどのように振舞うべきか(あるいは振る舞いべきでないか)を知識として事前に理解しているわけです。

あとは経験が不足しているに過ぎません。

 

また、自分の実力と配置の間にギャップがあろうとなかろうと、着任したからにはそれに見合った働きをしなければなりません。

だから最初は背伸びした状態でもがき苦しむことになるでしょう。

でも、もがいているうちに数か月が経過するといつしかあるべき姿で自然に振舞えている自分に気が付きます。

これは最初に感じたギャップの分だけ自分が成長した証なのです。

 

このように自分の成長が可視化できると自信に繋がります。

小さな成功体験を積み上げることによって、根拠のある自信を得ることに成功したというわけですね。

この小さな成功体験というのは海上自衛隊の仕事だけではなく、受験でも恋愛でも一般企業におけるビジネスでも成功に欠かせない要素なのです。

過去の自分ができなかったことで、今はできるようになったことをしっかりと記録し正しく認識することです。

『配置が人を育てる』という人事育成システムが極めて有効である背景には、このように論理的な根拠が存在するのです。

 

巧遅より拙速を尊ぶという考え方

もう一つのキーワードは『巧遅より拙速』ということでしょう。

海上自衛隊のような武力集団が掲げる最終的な目標の一つが『戦闘での勝利』である以上、このような考え方に帰結するのは自明の理なのですが、これは一般的な仕事においても大いに参考となるはずです。

 

絶えず状況が変化する戦場において『これが絶対正解』というものは存在しません。

少なくともその瞬間においては100%の確信を持つことはできません。

後から振り返ってみて、そして結果と照合してはじめて

「あれで正解だった」

と分かるわけです。

 

とはいえ刻一刻と迫ってくる数ある選択肢の中からよりBetterだと思えるものを選択しなければなりません。

その選択肢が複数あったとしてもです。

何も選択しないというのは自分たちの敗北に直結する行為だからです。

 

これを改めて要約すると

『限られた時間の中でよりBetterだと思える選択を繰り返し積み上げていく』

ということであり、これが海上自衛官の仕事の本質だと考えています。

限られた時間の中でという部分がとても重要なことなのです。

 

例えば自艦にミサイルが複数飛来している状況を想定すると、着弾時間が最も早い目標から対処しなければなりません。

迎撃できる条件が揃ったら、速やかにかつ極力遠距離で対処するべきなのです。

ミサイルの中には音速を超えるものもあり、それこそあっという間に着弾しますから

「より引き付けて正確に迎撃しよう」

などと考えていると、初弾にはなんとか対処できても次弾には対処しきれずに結果として被弾することになるのです。

このあたりが『巧遅より拙速』の具体例です。

 

こういう極端な例を出さずとも、日常業務においても同じことがいえます。

航泊を問わず大抵の業務には期限が決まっています。

期限を過ぎてしまえば、それがどんなに練られた秀逸な内容であったとしてももはや何の価値もないのです。

期限内によりBetterな成果を挙げることこそが求められているのです。

そしてBestな解答とはある程度の時間が経過してみなければ分からないものだと理解するべきです。

 

記事のまとめ

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私のようなごく普通の人間でも、上記のような『海上自衛隊式人事育成ブートキャンプ(仮称)』によってそれなりに仕事ができるようになりました。

しかも、これは自分にとって完全に身についたスキルですので、たとえ退職後であってもごく自然に発動することが可能なのです。

結果としてどんな仕事に従事しても、ごく少ない労力で求められる結果を出すことができる体質となりました。

(いわゆる海上自衛官体質と呼べるものです)

これは与えられた情報を分析して処理するという一連の思考と行動のパターンが出来上がっているからなんですね。

そうして勝ち得た余力は全て『個人の充実』に投資することが可能なのです。

(効率よくほどほどに仕事して、遊びに全力を尽くしているということをカッコよく表現するとこうなります)

 

そんな『それなり君』の私と『真に優秀な人材』との違いはどこにあるのかといえば

『一つの経験から得ている教訓の差(質量ともに)』

ということになるでしょう。

一般的に『頭がいい』とか『優秀だ』とか言われる人たちはここが決定的に違うのです。

アンテナの感度が良いというか、何を吸収すべきなのかという本質を見極める能力が高いのです。

故に学校成績も良いし、その後の部隊勤務でも成長を続けることが可能なのです。

 

後々将軍となるような人であっても初任3尉の頃はまだまだ未完成で、他の同期と実力もさほど変わりません。

ですが、高感度アンテナを持って部隊勤務経歴を重ねるうちに次第に大きな差となるのです。

私のような『それなり君』が優秀な人材に対抗する手段としては『苦労の質量を増やす』ということに尽きます。

一つの経験で得られる教訓が少ないのであれば、経験の数そのものを増やせばよいのです。

そして苦しいことや辛いことほど自分を成長させるエキスが詰まっているものなのです。

 

戦国時代末期の武将である山中鹿之助は

『我に七難八苦を与え給え』

といいました。

「もしかして、ドMですか?」

と思うかもしれませんが、ここに成長の真理が語られています。

 

今ならこの言葉を次のように要約します。

『我に成長するためのビックチャンスを与え給え』

ということだったのですね。

最後は大好きな戦国ネタも披露したところで、この記事を締めくくりたいと思います。

本日も長文をお読み頂きましてありがとうございました。

 

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