モデリング、模倣

 

何かの道を究めようとする時に一番確実で近道な方法はモデリング(模倣)です。

自分が

「この人スゲー」

って素直に尊敬できる人を見つけたら、とことん真似してみればいいのです。

 

護衛艦の操艦や仕事の進め方などについては直近の先輩を見ることによって

「なるほど、この人のやり方はスマートだ」

と今まで感じていた疑問が腑に落ちることも多いのではないでしょうか。

(反面教師もまた大いに参考になるが)

 

今回のタイトル『理想の指揮官』という言葉には少し含むところがあって、『平時』ではなく『戦時』の指揮官をイメージしています。

我が日本国は現在戦時下にはないので、指揮統率を語る上で若干のリアリティに欠ける部分がどうしても出てきます。

そこで私が参考にしていた『理想の指揮官』とは誰なのかということになると、実在の人物でありながら作品中の人物ということになります。

その人物とは池波正太郎の有名な時代小説『鬼平犯科帳』に登場する『火付盗賊改方長官 長谷川平蔵』その人です。

もちろん帝国海軍の提督方にも大いに影響を受けているのですが、やはり一番影響を受けているのはこの『鬼の平蔵』こと長谷川平蔵ということになるでしょう。

文庫本ではありますが全巻揃えており、何度も読んで内容を暗記しているにも関わらず必ず号泣させられる話もあります。

(本を読みながら落涙し鼻水を垂らすムサイ40代のオヤジ・・・イタスギル)

それはこの作品に描かれている人情の機微が『心の琴線』をビンビン弾いてくるからに他なりません。

 

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そもそも鬼平犯科帳とは

有名過ぎる作品なので今更説明の必要もないかと思います。

それでも分からない人は

「ググってください」

といえばそれまでなんですが、それではあんまり無責任なのでごく簡単に説明します。

というかTVドラマのオープニングで流れるナレーションをそのまま拝借すると

 

いつの世にも悪は絶えない。

その頃、徳川幕府は火付盗賊改方という特別警察を設けていた。

凶悪な賊の群れを容赦なく取り締まるためである。

独自の機動性を与えられた、その火付盗賊改方の長官こそが長谷川平蔵。

人呼んで鬼の平蔵である。

 

いや~ナレーションをタイピングしただけでゾクゾクしてきました(笑)

当時江戸の治安は南北町奉行所によって維持されていたのですが、幕末になって治安が乱れたことによって犯罪が増加し、このような特別部隊が設置されていたという背景があります。

『火付』つまり、放火という犯罪について特別に警戒していたということですね。

当時の江戸(日本全体がそうだが)は木造建築物によって形成されていますし、人口も密集していたので火事による被害は非常に大きなものでした。

実際に大火によって何度も町が消失しています。

そのような事情で『放火』という行為は決して許されざる重大な犯罪行為なのです。

もちろん、現代においても放火は重大な犯罪であることに変わりはありません。

神社に油をかけたり放火したりする事件が頻発している昨今『火付盗賊改方』を復活させて、切り捨て御免にして欲しいと思うのは私だけでしょうか?

・・・ちょっと脱線しましたが、『鬼平犯科帳』はそういう時代背景を持った作品になります。

 

他の有名な時代劇(水戸黄門とか暴れん坊将軍とか)と一線を画しているのは、必ずしもハッピーエンドで終わるとは限らないという点です。

味方のむちゃくちゃいい奴が殺されて終わりという話や極悪非道の悪党なんだけどある者に対しては優しさを持っていたりする話もあり、全てがリアリティに溢れているのです。

我々の住む現実世界は単純な『勧善懲悪』で割り切れるものではなく、池波正太郎の描くような世界観により共感を覚えます。

そして作品の中で主人公の鬼平に次のように言わせています。

 

人間というのは妙な生きものよ。

悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事を働く。

心をゆるし合うた友をだまして、その心を傷つけまいとする。

 

池波正太郎の世界観はここに集約されているといえるでしょう。

 

鬼平こと長谷川平蔵の生い立ちについて

ここでは実在の長谷川平蔵ではなく、作品中の鬼の平蔵について説明しておきましょう。

鬼平は江戸時代の旗本の子として生まれますが、いわゆる妾腹の子ということで義母に冷遇されていました。

これが原因で家を出て、当時の色町でもあった本所深川界隈で無頼者となって放蕩三昧の毎日を送ります。

ここだけ見ると全くのダメダメ侍なのですが、その後父親の急死に伴って家督を継ぐと見事に更生します。

(この間も剣術の鍛錬は欠かしていません)

鬼平はこの無頼の時代に弱い者の心情に寄り添うことを体得しています。

ここに鬼平が武家の子としてヌクヌクと育った通常の旗本とは根本的に異なる資質が見て取れます。

人生において一見回り道だと思えるような経験であっても、後々何かの役に立つことがあるという実例ですね。

 

鬼平のここを見習いたい(戦時指揮官の備えるべき資質)

以前の記事でも述べましたが、戦時指揮官の備えるべき資質を一言で言い表すならば

「この人(指揮官)のためなら死ねる」

と部下に思わせることに尽きるでしょう。

平時にこのような死生観について語ることは若干の憚りを感じますが、やはり武力集団の指揮官にとってこの部分は避けては通れないものなのです。

 

鬼平の資質とは

・部下や弱い立場の人間に対する寛容

・情に流されて大局を見失うことのない見識

・鋭い推理力と観察眼

・悪に対する峻厳な態度

・個人の茶目っ気という魅力

・個人の技量(鬼平は剣術の達人である)

 

恐らく戦時指揮官の備えるべき資質がここに全て備わっているのだと思います。

捕らえられた盗賊たちも鬼平の真心に感銘を受けて、かつての仲間を裏切って公儀(幕府)の役に立つことを選択します。

かつての敵でさえも味方に取り組むという人間的な魅力は指揮官の資質を考える上で非常に示唆に富んだものです。

そして、その根底にはやはり人間理解という要素が必要不可欠なのです。

 

記事のまとめ

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ただ単に『鬼平愛』を語りたかっただけじゃないの?

という若干の罪悪感を覚えますので、最後にちょっといいことを書いて軌道を修正しておきます(笑)

 

モデリングとはすなわち

「あの人ならどのように判断し行動するだろう」

と考え同じように行動すること他なりません。

人生を長く生きていればそれなりに経験を積むことになりますので、その時は自分自身の経験則(蓄積した成功体験)に従って行動すれば良いと思います。

しかし、若い頃は自分の尊敬できる人をイメージしてその人のように考え、その人のように振舞うことによって自分自身の資として吸収することがお勧めです。

 

若手士官の皆さん、秋は諸訓練で大忙しではありますがちょっと一服読書の時間をとって、モデリングの対象として『鬼平』を読んでみてはいかがでしょうか。

1話読み切りの作品が多いので少ない時間でサクッと読めますよ。

ただし、中毒性があるので1話だけでは到底やめられない危険性があることをさりげなく伝えてこの記事を締めくくります(笑)

 

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