虚礼廃止

 

観艦式も無事に終了し、これから年末に向けて本格的な訓練が実施される時期になりました。

現役時代もこの季節は大規模演習、術科競技、勤務評定などビックイベントが目白押しで、それらを無事に済ませて迎える正月は心の底からくつろげる一時でした。

また、この時期になると世間ではお歳暮や年賀状といった季節のキーワードが飛び交いますが、実は海上自衛隊においてはこれらの慣習とは無縁なのです。

今回はこの辺の事情について語ってみたいと思います。

 

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お歳暮やお中元などの贈答

現在では日本社会全体において、こういった季節の贈答という慣習が少なくなっているように感じますが、海上自衛隊では『絶対禁止』とまでは言わないまでも『虚礼廃止』という伝統がありました。

これは海上自衛隊オリジナルではなく帝国海軍時代からの伝統だと聞いたことがあります。

個人的に特別な親交があれば制限はありませんが、単に職場の上司部下という関係だけでお歳暮やお中元を贈ることはないのです。

組織全体の共通認識として『虚礼廃止』という暗黙の了解があることは気分的にも非常に楽でした。

 

年賀状

これも贈答品と同じで職場の上司部下だからといって年賀状を送るということはありませんでした。

逆に親交のある間柄であっても同じ職場にいる間は遠慮していて、お互いに転勤した後に年賀状を交換するという雰囲気があったように思います。

全体として年賀状を交換しない環境の中で、あえて同じ職場の上司に年賀状を送ることは追従するかのような後ろめたさがあったからかもしれません。

ただし、士官室の他のメンバーに確認したこともないので実際のところはどうであったか分かりません。

(もしかすると出していなかったのは私だけだったかも?)

伝え聞くところでは陸上自衛隊では数百枚単位で年賀状を準備するとか。

海上自衛隊に比べて指揮する隊員数が段違いに多いので、階級や職責に比例して年々その数が増加すると考えるだけで気が遠くなりそうです。

 

また、ほぼ毎年のように転勤に伴う転居を繰り返しているため、親戚や旧友からの年賀状は常に『転送』によって届けられていました。

最初の頃は『引っ越ししましたハガキ』を送っていたものの、毎年のことなので面倒になり年賀状を送ることで新住所を知らせるようにしていたからです。

(もちろん、この新住所も次回の年賀状では転送の対象になるのだが)

このため我家では元旦に届けられるものは少なく、一週間から10日かけて少しづつ集まってくるのが普通でした。

 

新米分隊長へのお願い

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最近はこのブログを読んで頂いている現役初中級幹部の方もいらっしゃるようですので、この場をお借りして一つお願いがあります。

それはこの夏に乗艦してきた初任海士のご父兄に宛てて、是非とも年賀状を送って頂きたいということです。

(もちろんすでに暑中お見舞いを出された分隊長もいらっしゃると思いますが)

これは私が幹部候補生だった当時の分隊長から暑中見舞いを頂き、それを読んだ両親が非常に感動していたという体験に基づいています。

 

もちろん、私自身も非常に嬉しくて

「自分が分隊長になったら分隊員にハガキを出そう」

と心に誓ったものでした。

ですが、分隊員全員に出してしまうと

「うわっ、分隊長から年賀状が来ちゃったよ。返信した方がいいかな?」

などと余計な心配をかけてしまいますので、初任海士だけでいいと思います(笑)

 

初任海士のご父兄はご子弟を自衛隊に入隊させたものの、新聞やTVで執拗に繰り返される自衛隊に対する悪意ある報道に心を痛めている方もいらっしゃります。

そんな時にご子弟の上司である分隊長からハガキが届くと

「あぁ、いい職場で働いているんだな」

と安心して頂けるはずです。

メールやLINEなどデジタル通信全盛の現代だからこそ、手書きのハガキに込められた気持ちがしっかりと伝わるのだと思います。

護衛艦などの装備機器がどれだけ発達してもそれを運用するのは人間なのですから、やはり人間を大切にする組織こそが真に精強な組織だといえるでしょう。

 

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