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護衛艦乗組員は、所属している艦が可動艦であれば自分が非番の時も行動に制約があります。

可動艦であれば緊急出港に備え、〇時間以内に帰艦できる範囲にいなければならないからです。

まさに目に見えない鎖に縛られている状態だといえます。

 

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この事実との因果関係は明らかではありませんが、日中はパチンコにハマる者が相当数存在します。

平日の昼間に休みになることが少なくない(関連記事:代休)護衛艦乗員にとって、鎖の範囲内で日中から遊べるところは限られてくるからです。

そもそも地方都市には娯楽と呼べるものが限定されていることも一因だと思います。

そして、このことが確実に借金の原因となっています。

 

批判を省みずあえて言及するならば、パチンコで散財することで本来自分たちが撃ち落とすべきミサイルの製作資金を助成しているといえなくもありません。

これは恐るべきパラドックスであります。

更に、それによって(資金調達によるミサイル整備の促進)高まった脅威が自分たち自衛官の存在意義を高めているとすれば、最早いうべき言葉さえ見つかりません。

 

かくいう私はどうかといえば、2002年に事件を起こしてドロップアウトするまではほとんどギャンブル経験がありませんでした。

しかし、事件後しばらくの間は虚無感に陥り、全てのことがどうでも良いという投げやりな精神状態にありました。

そこで思いっきり下らないことに散財しようとパチンコ店に連日通うことにしたのです。

何といっても最初から金を無駄に捨てることが目的なので、それは酷い結果となりました。

数か月間で失った金額は〇百万です。

しかし、不思議とそれで体内の毒が全て抜けてしまったような(デトックス)さっぱりした気持ちになったのも事実です。

借金には至らず、通帳の残高がすっきりした程度に止まったからかもしれません。

これは私に限っての事かもしれませんが、自衛官時代は『金を稼いでいる』という意識が希薄でした。

やるべきことを淡々とやっていると、自分の銀行口座に自然に給与が振り込まれているという感覚でした。

自衛隊をやめない限りは、毎月確実に一定額の給与を受け取れるという安心感が浪費に対する罪悪感を希薄にしているのかもしれません。

 

この経験が単なる浪費に終わり、全てが無駄なったかといえば実はそうでもありません。

今までは自分がギャンブルをしたこともないくせに

「つまらないことに、金を使うんじゃない」

などと決めつけて偉そうに指導してきましたが、この経験以降はギャンブルの面白さと危険性の両面を理解した上で話ができるようになったからです。

 

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自分の体さえパチンコ店に運んでしまえば、後は思考停止して目の前で起きていることを眺めていれば良いという手軽さ。

パチンコ台だけに集中することで得られる人間関係の断絶。(艦内生活による密接な人間関係への反動)

お金を浪費し続ける時の焦燥感。

いつ大当たりするかという期待感。

当たったときの高揚感。

店内の大きな音量と盤面の激しい動きと光によって麻痺状態に陥った脳内活動。

僅か数分でいとも簡単に消えていく一万円札。

自分がお金をつぎ込んだパチンコ台を人に渡したくないという独占欲。

あともう少しお金を投入すれば、大勝ちできるかもしれないという根拠のない確信。

負けた時の記憶は忘れ、勝った時の記憶だけが残るという人間の脳内特性。

どれも自分の経験に裏付けられた生々しい感覚です。

 

寄港地での上陸前には、恐らくパチンコに行くであろう分隊員達に以下のような話をして送り出しました。

  1. 負けた分を取り返そうなどと思うな。その数時間を数万円で楽しんだ代金だと思え。
  2. 負けたと思っているから取り戻そうという考え方になり、それが更なる散財に繋がるのだ。
  3. ギャンブルは人から金を借りてまでやるほどの価値はない。
  4. 借金は『幸せの前借』である。未来の自分の幸せを先に消費した『つけ』は必ずやってくる。

 

日頃からちょっとした隙間時間に喫煙所等で分隊員達と話をするとき、よくパチンコの話題になりました。

そういう話題はやはり『食い付き』が良いものです。

大抵この種の話は自分が大勝ちした経験談に終始するのですが、私の場合は最後に必ず大敗する話をしていました。

大敗するときの心理状態をリアルに伝えることで、ギャンブルに対する依存度を少しでも減少できれば良いと考えていたからです。

「そういえば、分隊長があんなこと言っていたなぁ」

と思い出して、むやみな浪費を思い止まってくれる人間が一人でもいれば、それが私にとって何より嬉しいことだったのです。

 

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