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護衛艦の一般公開でも立入禁止区域とされ、見学は決して許可されない聖域『士官私室』についてお話しします。

まず司令室及び艦長室についてですが、ここは完全個室の1人部屋となっています。(客船でいえばスイートルーム)

ベットはもちろんシングルで、何といっても浴室と洗濯機が付属しているのが魅力です。

逆にいうと司令や艦長といえど、自分で汚れ物を洗濯しているということです。

舷窓がついているのも他の士官私室と大きく異なる点で、自然光を取り入れることが可能となっています。

 

一般的な士官私室は2~4人部屋になっています。

ベットの形状は上下2段で、階級上位者が下段を使用するのが慣例です。

昇任によって使用ベットが下段になった時は

「ついに下段ベットで寝ることができるようになったかぁ」

とちょっとした感慨に浸りました。

 

下段のメリットは、ベッドに腰掛けることができる点でしょう。

上段ベットは備え付けの階段で昇降するので、艦の動揺が激しい時など十分にタイミングを計る必要があります。

荒天対策として、転落防止柵と体を固定できるベルトなどが装備されています。

ベット周辺はカーテンでぐるりと囲うことが可能なので、睡眠時のプライベート(間抜けな寝顔)を保護することができます。

またベッドの最下部には引き出しがついており、各個人用の引き出しを使用して下着などの衣類を収納しています。

 

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各種制服などは縦型の衣類ロッカーに収容しています。

一般的なロッカーに比べると幅も広く、収容能力に優れています。

個人差はありますが、各種制服や作業服など種類が多いため結構かさばるものなのです。

 

机は天板が折り畳み式になっています。

荒天時はこれを閉じておくことにより、書類等の飛散を防止することができます。

過去ここを閉じずに当直勤務に従事中、天候の急変により(部屋に戻ることができず)悲惨な状況になった経験から、航海中は必ず天板を閉じておくという習慣を身に着けました。

その惨状は、さながら盗賊団が通り過ぎたあとのようでした。

机やロッカー等に付属している全ての引き出しにはロック機能がついており、艦が動揺しても容易には開放しない仕組みになっています。

しかし、これもしっかりロックされていることを確認する癖をつけないと大変なことになります。

 

備え付けの椅子は専用金具で床に固定できるようになっています。

かなりの荒天時でも、この固定された椅子に座ってへばり付いていると意外と快適です。

大抵の部屋には、小さな洗面台が付属していますので、歯磨きや洗顔などは室内で済ますことが可能です。

 

このように決して広くないスペースに各種設備が効率的に配置されているのが士官私室の特徴だといえます。

空間的な余裕はないものの、それがかえって利便性を高めているともいえるでしょう。

何といっても全て1~2歩で手が届く範囲にありますから。

数人で共同使用する相部屋なので完全な個室とはいえないものの、乗員の居住区に比較するとはるかに恵まれた生活環境(特にプライバシー面に関して)であるといえます。

その分、同居している相手との相性は極めて重要な要素になってきますが(汗)

 

なお、士官私室の清掃は自分自身で行います。(ゴミは当番が回収に来てくれる)

幹部の中には、忙しさにかまけて自室の整理整頓や清掃に無頓着な者も少なくありません。

私は以下の理由と必要性から、比較的きれいな室内状態を維持していたと自負しています。

  1. アレルギー性鼻炎(ハウスダスト)であるため、清掃を怠ることは死活問題であった。
  2. 自室の管理もできない幹部が、部下の管理などできるわけがないというのが信条であった。
  3. 部屋が整頓されていないということは、必要な書類を探すのにも時間がかかり、職務遂行上支障がある。

 

日頃幹部として偉そうなことを言っていても

「あいつの部屋、無茶苦茶汚いぜ」

などと乗員にいわれるようになっては、もはや指揮監督などできようはずもありません。

 

私の前任者はなぜか、整理整頓できないタイプの幹部が多く、新着任すると最初の1週間は士官私室の徹底的な清掃と書類整理(破棄)にあたることが多かったと思います。

前任者の積み残しの仕事を一掃することも含め、士官私室の清掃は私にとって重要な意味合いを持つある種の儀式のようなものでした。

 

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