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護衛艦で生活をしていると聞こえてくる様々な音に関して紹介します。

停泊中と航海中で聞こえてくる音は多少異なりますので、それぞれに分類してみました。

なお、両方に共通している音に関しては、航海中に記載しています。

 

一度でも護衛艦を訪れた経験がある方にとっては、

「あ~、そういえばそんな音が聞こえたかも~」

と思い出して頂けるかもしれませんが、まだ未体験の方はこれを機に体験航海や一般公開などで護衛艦を訪問し確認されてみてはいかがでしょうか?

では、早速いってみましょう!

 

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停泊中

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サイドパイプと艦内号令

護衛艦は停泊時において日課の施行、作業員の招集解散、乗員の呼び出しなど様々な目的のために艦内号令を用います。

この艦内号令に先立って内容に応じたサイドパイプの吹奏を行います。

これにより、聞く側は

「あっこの艦内号令の内容は〇〇に関することだな」

と心の準備ができる仕組みになっています。

すなわち予令(予め号令の内容を理解させる)することで内容を予測し、速やかに次の行動へ移行することができるのです。

 

護衛艦などの大型艦では艦の舷門で立直する1、2分隊系の乗員が吹奏を担当しています。

(掃海艇など小型艦船では3、4分隊の乗員も吹奏することがあるようです)

岸壁に多数の艦船が停泊していると各艦から

「ホー」「ヒ~」「ロ~」(全部で8音あるが省略)

などと『トンビの鳴き声のような音』が聞こえてきて、何となくのどかな気持ちになります。

 

夏になると教育隊を卒業した初任海士達が護衛艦に着任し、昼休みなどを利用してサイドパイプを練習するのですが、ちょうど春先のウグイスが上手く鳴けないように

「ピピッ」「ス~」「フウフウ」

などと苦しい音を出しているのもまた微笑ましいものです。

やはり楽器的な要素があるようでセンスのいい乗員はすぐに上手になりますが、逆にいつまで経っても苦手な乗員もいます。

 

そんな初心者であってもいつかは独り立ちして、指揮官を舷門送迎するために

「ホーーーヒーーーホーーー」(これを指揮官の歩くタイミングに合わせて2回繰り返し吹奏します)

と吹奏する日がやってきます。

明らかに経験不足で、かつ普段からサイドパイプを苦手としている乗員と一緒に整列して舷門送迎する時は当直士官としても

「・・・大丈夫かなぁ」

と心配になることがあります。

ベテランの先輩海曹が指導して音が出ないように(サイドパイプはみだりに吹奏してはいけない決まりになっています)予行を繰り返して本番に臨むものの、極度の緊張で音が『続かない』『途切れる』『外れる』ということもままあります。

 

そういう失敗が起こってしまった時、舷門に整列している当直士官以下の整列員は猛烈な緊張感に襲われています。

「しまった~、やっちまったよ(怒られる~!)」

と内心ドキドキ、体は硬直しながら指揮官が通り過ぎるのを見送るのですが、通り過ぎざまに

『ニヤッ』

と笑いながら

「練習、練習、練習あるのみ~」

などとつぶやいて通り過ぎて行かれると安堵のあまり全身脱力してしまいます(笑)

 

自分の大失敗に半ば意識が飛びかけている本人に

「次は頑張ろうな」

と声をかけると

「・・・ハ・・・ハイッ!」(ヘナヘナ~)

と皆に遅れて脱力することに。

慣れてしまえば何ということもない日常業務ですが、舷門送迎はちょっと改まった儀式的な要素があるので緊張するんですね。

 

サイドパイプについていろいろと述べてきましたが、私自身はこれを吹奏することができません。

幹部はサイドパイプを吹奏することになっていないので、幹部候補生学校でもサイドパイプ吹奏の教務はないからです。

ですが、今にして思えばベテラン海曹に吹奏を習っておけばよかったなと思います。

サイドパイプは『船乗りらしいアイテム』の最たるものなので、郷愁に浸るには最適なグッズだからです。

 

 航海中

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艦内アラーム

護衛艦生活で聞こえてくる音の中でも最も嫌な音だといえるでしょう(笑)

艦内アラームが鳴るということはイコール『総員配置』ということですから、受け持ちのハッチや扉を閉鎖するとともに固有配置に向かう必要があります。(配置完了までの制限時間あり)

戦闘部署や緊急部署(防火、防水など)で総員配置につける必要がある場合に部署発動の号令とともに吹鳴されます。

出典元は忘れてしまいましたが、ある説によれば艦内アラームの音は人間が最も不快を感じる周波数で吹鳴するように作られているようで、確かにあの音を聞けばどんなに熟睡していても目が覚めてしまいます。

加えて心臓がバクバクしてしまいます(笑)

この心臓バクバクを少しでも緩和するため深夜の戦闘訓練等においては、

「間もなく配置につける」(小声でアナウンスするので意外と不気味)

と事前にアナウンスを入れ、一呼吸おいてからアラームを発動するなどの工夫をしています。

しかし、分かっていてもアラーム音を聞けばやっぱり心臓がバクバクしますけどね(笑)

 

ガスタービンエンジンの高周波ノイズ

近年のほとんどの護衛艦が動力源として採用しているのがガスタービンエンジンです。

仕組みとしては、燃料を燃焼する際に発生したガスでタービンを回転させ動力を得るというもので、航空機のジェットエンジンと同じ原理です。

飛行場に駐機した航空機がエンジンを回しているところを想像して頂ければ分かり易いと思いますが、あれが狭い艦内で作動しているのです。

もちろん機械室の内壁や扉などには防音設備が施されていますが、高速で航行すればするほど

「キーーーーーーン」

という独特の高周波ノイズが漏れ聞こえてくるのです。

(機械室で勤務している機関科員は防音ヘッドセットを被っています)

この音は航海中である限り断続的に聞こえてくるので、気になりだすとなかなかに不快な音だといえるでしょう。

 

通風音

艦内は通風管によって新鮮な空気の循環を行っており、その吹き出し口付近ではそれなりに大きな音がしています。

普段はこの音に慣れてしまっているのですが、最もこの通風音を意識する訓練があります。

それは『防火訓練』の時で、火災の延焼を防ぐために艦内の通風を止め空気を遮断するのですが、この瞬間驚くほどの静寂が訪れます。

訓練をしながらも

「うん?なんだろう、こう静けさは?」

と思う瞬間があるのですが、それは通風が止められているからなのです。

火災が鎮火して排煙を除去するために再び通風が再開されると、改めてその音が大きかったことに気が付くのです。

 

波きり音

護衛艦が洋上を航行することによって艦橋や甲板上では

「ザッパ~」

と波を切る音が聞こえてきます。

これを艦内で聞くと

「ゴゴゴ~」

とこもった音として聞こえてきます。

また、停泊中に自分の寝室が水線付近でかつ外舷に近いと

「チャポン、チャポン」

という音が聞こえてくるものです。

 

風切り音

これも艦橋や甲板上で船体構造物などに風が吹き付けて

「ヒュ~ヒュ~」

音がしているものです。

特に冬場の風切り音は寒々しくて、甲板上に出ていくのが嫌になります。

基本洋上では他に遮るものがありませんから、風は直接艦に吹き付けてくることになりますし、自艦も航行していますから相対的に強い風を受け風切り音も大きくなります。

 

船体のきしみ音

鋼鉄の塊である護衛艦ですが、波、うねり、風などの外力を受けて、あらゆる方向に圧迫され、引き延ばされ、ねじられています。

これによって船体のあらゆる場所から

「ギシギシ」

と音を立てることになるのです。

台風に代表される荒天時の航行においては

「船体がちぎれるんじゃないか」

と思うくらい盛大にギシギシ鳴っております。

 

記事のまとめ

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いかがだったでしょうか?

今回は護衛艦生活で聞こえてくる音について紹介してみました。

とりあえず頭の中に浮かんできたものについて記事にしてみましたが、今後も他に思い出すことがあれば加筆していきたいと考えています。

改めて振り返ってみると、私たちが陸上で生活している限りは絶対に耳にすることのない音があるものですね。

次回は五感に関する第2弾として『護衛艦の匂い(臭い?)』についても紹介します。

 

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