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インドネシアを出港した練習艦隊はマレー半島を左手に見ながら北上しました。

目指す寄港地はタイランドの首都バンコクです。

バンコクに行くためにはメナム川(淡水)を遡上する必要があり、これは私にとって初めての経験でした。

過去に南米大陸のラプラタ川沿岸の都市ブエノスアイレスやモンテビデオに寄港したことはありますが、河口沿岸部といってもほとんど海といって差支えない場所だったからです。

海水に比べて淡水は比重変化にともなって喫水が深くなりますから、艦の運動性能にも影響が予想されました。

実際、川の流速が早いこともあり運動性能に大きく影響を受けました。(もちろん水先案内人は乗艦しています)

 

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また別の観点からバンコク周辺は水上交通網が発達しており、細長い船体に強力なモーターを搭載した高速船が縦横無尽に航行していたため何度も冷汗をかく場面が起こりました。

 

バンコク

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かなりの距離を遡上してきて、やっとの思いで入港したバンコク港はクロントゥーイ地区の付近に位置していました。

周辺はどこまでも続く倉庫街が印象的な港です。

練習艦隊の入港に合わせてたくさんのタクシーやトゥクトゥクと呼ばれる乗合タクシーが待機していたので、上陸にはそんなに困らなかったと記憶しています。

 

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市内の中心部に行って、予想以上の都会ぶりに驚きました。

失礼な話ですが私の持っていたタイランドのイメージはのどかな田園風景だったからです。

以前日本で米不足になった時、タイから大量のタイ米を輸入したという記憶があり、それが米作農業と結びついていたからだと思います。

 

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そして至る所に屋台が出ていて、どこで何を食べても美味しいのでまたまたびっくりです。

1品あたりの分量が少なめなので、1,2時間に一度は屋台で何かを食べていました。

タイ料理に関する予備知識がまったくなかったため、注文方法は屋台に書いてある写真を指差すだけでしたけどね。

 

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タイ風ラーメンはずいぶんあっさりしているな思って食べていたら、隣のタイ人が

「この調味料を入れろ!」

といって砂糖やらとんがらしやらナンプラーを大量に投入してくれました。

結果『甘い』『辛い』『酸っぱい』が一度に襲ってくる複雑な味に変貌しましたが、原型はほとんど残っていませんでした。(本人はこれがスタンダードな食べ方だと力説していました)

 

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タイ風焼きそば、そんなに調味料を加えなくてもしっかり味がついていて美味しかったです。

でもこれもホントは大量の砂糖をぶっかけて食べるのが良いとされているようでした。

要するにタイ料理は出てきた段階では未完成な料理で、自分の好みに合わせて調味料を投入してはじめて完成するのだと理解しました。(誤解かも?)

日本のお店で一口も食べないうちに大量の調味料を投入したら、店長から嫌な顔をされそうですけどね。

 

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タイに入港する前から絶対に見に行こうと決めていたのがムエタイ(キックボクシング)でした。

これも前回の南米遠洋航海の時にメキシコの『ルチャリブレ』というプロレスをリングサイドで観戦して大興奮した経験があったからです。(しかも安い)

士官室で同行してくれる人を探していると水雷長が名乗り出てきました。

水雷長は普段はすごくクールな性格なので、格闘技に興味があったことが意外な気もしましたが、人には意外な一面というのが必要なんですよね。

 

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早速二人で競技場へ向かいます。

試合が始まる前のダンスも神秘的で単なる格闘技ではなく、国技としての伝統を感じました。

試合が始まるとリングサイド席ということもあり選手との距離が近く、骨と骨がぶつかる音が物凄く生々しく響いてきます。

後ろの方で地元の人たちがやけに盛り上がっているなと思っていたら、試合の結果に対して『賭け』が行われているようでした。

株式市場のように指で激しく合図しながら、お金が飛び交っています。

ちなみに地元タイ人用の観覧席とリングサイドの席はフェンスで区切られており、我々のような外国人はリングサイド周りの席しか購入できませんでした。

理由は『賭け事に熱中していて危害を受ける恐れがあるから』だとか。

 

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タイに行ってすぐに気が付くことは、プミポン国王殿下の人気の高さです。

街中のいたるところに写真が飾られていますし、公共施設などでは朝と夕方の定時に国家が流れてきてタイ国民はその場に立ち止まって姿勢を正します。

これは、私達自衛官にとっては非常に共感できることです。

同じように朝夕の国旗掲揚降下に際して、国旗(艦旗)に対して正対し敬礼することが体に染み込んでいるからでしょう。

 

国民の一人一人が王室に向ける敬愛の念は純粋で、子供が親を思う気持ちと同じように感じました。

それはプミポン国王のお人柄によるところも大きいのではないかと思います。

翻って我日本にも、タイ国王殿下に勝るとも劣らない天皇陛下のご存在があります。

この天皇陛下とご皇室のご存在が、国際的に見てどれほど有難い存在なのかということについて、日本人は偏った考え方を捨て真摯に考え直すべきだと思います。

 

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また仏教に対する信仰心も非常に深いものがあります。

街中の至る所にお寺や祠がありますし、参拝者のあげる線香の煙が絶えることはありません。

年齢や性別、貧富の差によらず一心に祈るその姿には感銘を受けました。

現世利益的な側面が強いことは否定できませんが、徳を積んで(タンブン)幸せになるという図式は単純かつ明快であり、人間の持つ願いの本質にせまるものだと思うのです。

 

この仏教的な美点の一つとして、『ワイ』という合掌による挨拶があげられるでしょう。

自分と相手との関係性によって、手を合わせる位置が異なります。(相手が目上であればあるほど合掌の位置は高くなる)

人が合掌するという姿勢はなんと美しいものだろうと改めて感じました。

 

国家にとって核となる王室や信仰があるということは、そこで暮らす国民にとってどれほど幸せなことか深く感じた訪問となりました。

逆にいえば、この核となるべきものがなかったり、あるいは独裁者であったりすれば国民はどれほど不幸であるかということなのでしょう。

 

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