2003遠洋航海-crop

 

オーストラリアを出港し、旗艦「かしま」と合流します。

次の目的地パプアニューギニアを目指して北上していきます。

東オーストラリア海流を遡上するということもあり、再び暖かい海が戻ってきました。

この海は珊瑚海と呼ばれ、『珊瑚海海戦』が行われた海域でもあります。

『珊瑚海海戦』は史上初めての空母機動部隊同士の戦いであり、その結果がミッドウェー海戦の大敗に繋がっていることを思うと感慨深いものがあります。

一つ確かなことは、敵味方を問わず多くの人命が損なわれたという事実でしょう。

ここから先、日本に帰国するまでの航程は、常にそういう思いとともに進む慰霊と鎮魂の海なのです。

 

3等海佐に昇任

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メルボルンを出港する当日にひっそりと3等海佐に昇任させてもらいました。

実はこの昇任については、日本出国前から知らされていたのです。(本来はこのように前もって昇任を予告されることはないが遠洋航海中という特殊事情による)

佐世保を出港する前に司令から呼ばれて

「遠洋航海中の7月1日に3等海佐昇任の内示がきているから、制服の準備(金線の巻き替えや肩章の準備)しておけよ」

と告げられていたからです。

1等海尉までは同期全員(特殊事情のある者を除き)が横並びで一斉に昇任します。

言い換えれば、3等海佐からは同期でも階級に差が生じるということです。(当然ながら、敬礼と答礼という関係が生じます)

実際に同期の中でも『1選抜』と呼ばれる人達は、この半年前の1月1日に3等海佐に昇任済みでした。

 

このブログを以前から読んでいる方はご存知だと思いますが、私は丁度1年前に事故を起こした経緯を持つだけに、よもや『1選抜』から半年遅れの『2選抜』で昇任するとは思ってもみませんでした。

これはひとえに第2護衛隊司令をはじめとする皆様の並々ならぬご尽力の賜であることは言うまでもありません。

人の情けの深さに触れ、胸の中が熱くなるのを感じました。

私自身は昇任に対する執着は薄い方でしたが、何かにつけて今後の勤務に不利にならないよう細やかな気配りを頂くことが本当に有難く、また、もったいないという思いで一杯になりました。

このご恩を少しでも返すため、遠洋航海で実習幹部をしっかりと指導していこうと心に誓って佐世保を出発したのでした。

 

 ポートモレスビー

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パプアニューギニアはあらゆる面で衝撃の連続でありました。

実習幹部時代にはリオデジャネイロ、サンパウロ、カルタヘナなど南米の都市、今回もスバなど治安が悪いとされる都市に寄港してきましたが、ここポートモレスビーは別格だったといえます。

私の人生においても最も治安の悪い街だと断言しても良いでしょう。

 

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正式に入港する前日、仮泊地で現地駐在連絡官の方に治安情報の講話を受けるのが通例ですが、にわかには信じがたい内容の連続でしっかりと脳内に焼き付いています。

まずは、地元盗賊団『ラスカル』の存在についてです。

日本人は『ラスカル』と聞くと、あの愛くるしいアライグマのアニメを想像するのではないかと思います。

しかし、そもそも『ラスカル』とは『ならず者』という意味で使われる言葉であり、ここにはまさにその意味に相応しい『ラスカル』が存在するのです。

 

講話内容は実例紹介という内容でその項目は

  1. 交差点で赤信号になっても停車してはいけない。つい最近も停車した車が盗賊団に襲われて生命を含めた全てを持っていかれたばかりである。
  2. 現在の法律では『首狩りと食人』は禁止されているが、2か月ほど前にドイツ人の旅行者夫婦が襲撃されて首を狩られたようである。
  3. パプアニューギニアは有名なダイビングスポットであるが、最近日本人女性ダイバーが安全のためガードマンを雇ってダイビングに向かったが、ガードマン本人によって強〇〇害された。

特にショッキングで印象深いものを紹介しましたが、他にも色々ありました。

 

ここパプアニューギニアでも実習幹部の引率業務がありました。

やはり文化保護センターという趣旨の施設になります。(名称不明)

 

 

戦いに行く前のダンスのようです。

『首が狩れる、狩れるぞ~首が狩れるぞ~』的な歌なのでしょうか?

 

現地の想像を絶する治安事情により、このポートモレスビーでは基本自由上陸は禁止されていました。

ですが、初日はその規制が徹底されておらず後学のため自由上陸してみました。

港の出口にはゲートが設置(周囲は全てフェンスで囲われていた)されており、そこにはガードマンが配置されていたのですが、その姿にちょっとしたカルチャーショックを受けることになります。

なぜなら、ゲートの左右に一人づついるガードマンは、服装こそ普通の警察官のような恰好をしているものの装備武器がちょっと変わっており、一人は山刀(清龍刀みたいな感じ)、もう一人は弓矢を構えて警備に当たっていたからです(汗)

これは襲撃してくると想定される盗賊の装備武器が同等(刀、槍、弓矢)ということだったのでしょうか?

さすがにカメラを向けて写真撮影できなかったのが、かえすがえす残念です。

おっかなびっくりゲートを通過して、一応街の方まで行ってみましたが人気は全くありません。

飲食店もなく、静まり返った街の暗闇からは殺気さえ漂ってくるようです。(寄港地講話が頭によぎります)

私の本能も危険信号を鳴らし続けるので、早々に撤退して帰艦し事なきを得ました。

 

翌日からは欧米系ホテル(多分ホリデイインだったと思います)へシャトルバスで行って、食事やスポーツを楽しむことで落ち着きます。

シャトルバスの中から見ていると、未舗装の地面にTシャツなどが並べられたマーケットなどがありましたが、とても私たちの立ち寄れるようなレベルではありません。

現地の人達はビートルナッツ(麻薬効果もあるらしい)と呼ばれる木の実をガムのように噛んでいますが、時々唾を吐き出します。

ビートルナッツの樹液は真っ赤なので、当然吐き出した唾も真っ赤なのです。

道路は所々にその真っ赤な唾が吐き散らかされており、マーケットの商品も赤く汚れたものが目立ちます。

しかし、治安の悪さを考慮すると『唾』なのか『血液』なのか判別できないところが恐ろしいところです。

「まさか、その商品の入手方法は追剥ぎ?」

とも思える真っ赤なシミで汚れていたのが印象的でした。

そして車外からこちらの存在に気が付くと『ニヤァー』と笑うのですが、その眼は決して笑っていませんし、真っ白な歯と真っ赤な唾液のコントラストは食人のイメージに直結しています。

金品を狙う盗賊の目というよりは、『美味しそうな肉』を見る時の目そのものであると感じました。

とてもフリーで上陸などできそうにありませんでしたし、またしなくて良かったと心底思います。

 

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これに比べてホテル内は高いフェンスに囲まれているので安心できました。

ホテルでテニスをしているとボールがフェンスを越えてしまうことがあり、取にも行けずあきらめていたところ

「〇#&%$?!」

と何やら叫ぶ声がします。

声のする方を見るとボールを持った現地の住民のようです。

「ボールを返してくれるのかな?結構親切じゃん!」

と思って、フェンスの上から投げ入れてくれるようジェスチャーすると、しきりに首を振って

「お前がここに取に来い(推測)」

とジェスチャーで返してきました。

・・・・・・無理。

笑顔を保ったままで、

「そのボールはお前にやる」とジェスチェーします。

相手もムキになって、

「いいから、とにかくこっちに来い!(推定)」

と激しくジェスチャー返し。

この後約5分に渡ってフェンス越しに繰り広げられたジェスチャー応酬の光景は、『江頭2:50』さんのギャグそのものでした。

 

いろいろと常識破りなパプアニューギニアでしたが、そもそも常識なんてものは自分の経験則に過ぎないのですから、世界にはそこに相応しい常識が存在するわけです。

そんな当たり前のことに気付かされたパプアニューギニア寄港となりました。

プライベート旅行での再訪は、絶対にないということは言うまでもありませんね。

 

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