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『せんだい』での勤務も終盤に近づいてきた冬のある日、突然艦長室に呼ばれます。

「やばっ、何かやっちまったか!?」

とドキドキしながら入室しました。

 

艦長:「通信士、経理補給の入校内示が来ているがどうする?お前、艦艇希望じゃなかったか?」

通信:「経理補給?そういえば練習艦隊の希望職種調査の時に書いた気がします。ですが鹿屋で配属発表の際は艦艇といわれてここに着任しました」

艦長:「じゃあ、断っていいんだな?」

通信:「はい、艦艇でお願いします」

このような、やりとりによって私のその後の人生は決定しました。

 

練習艦隊で艦艇がすっかり嫌になり経理補給を希望したものの、約1年間の通信士勤務で

「艦艇勤務も悪くないな」

と思うようになりました。

 

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逆に経理補給は自分には合っていないことが分かりました。

海幕補任班は見ていないようで意外と個々人の適性を把握しているのかもしれません。

更に艦艇職種の中でも、水雷特技に行きたいと思うようになりました。

これは、『せんだい』艦長の特技(マーク)が水雷だったからというのが一番大きな要因ですが、感覚的に自分には1分隊(攻撃分隊)が合っているように思えたからです。

そもそも、ここに着任したころは諸事情によりすっかりやる気をなくし、1年勤めたら退職しようと思っていた私が、ここまで心境の変化を遂げるとは想像もしていませんでした。

 

通信士は艦橋内で常に艦長のそばで勤務することが多い配置です。

艦橋の右側にある艦長席の隣で無線を送受信し、その後ろの海図台で艦位を把握し報告するなど、常に艦長の目の届く範囲で仕事をすることになるのです。

艦長はたくさん失敗しながらも必死に動き回る私を、常に暖かい目で見ていてくれました。

 

私から見た艦長は当時まだ40歳にもならない若さであったにも関わらず、完璧な指揮官像を体現している方で、知力、体力、徳力の全てを兼ね備えたスーパーマンでした。

私の人生において初めて出会った圧倒的な尊敬の対象です。

入隊前に読み漁った海軍関連の書籍に登場する海軍軍人のような立派な人が、海上自衛隊にも実在したという事実が私の気持ちを変えました。

 

だからこそ

「1年で退職しよう」から

「水雷幹部になって、やれるところまでやろう」

に変わったのです。

 

経理補給の学校入港を断ってしばらくした頃、改めて次の配置の内示がありました。

舞鶴の護衛艦『しまかぜ』機関士であります。

俗にいう3ローテーションの2配置目は機関科配置に決まったのです。

 

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