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護衛艦勤務に復活して、劇的に変化を感じたのが立入検査隊の存在です。

Wikipedia引用

1999年(平成11年)成立の周辺事態法を受けて翌年制定された周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律により、海自が必要な場合に応じて、一般船舶に対して海上阻止行動を実施することが可能となった。

これを実行するのが、各護衛艦に配置された立入検査隊で、その指揮官が水雷長なのです。(各護衛官の士官構成によって異なります)

水雷長である理由について。

1分隊幹部である。(これはそんなに重要ではないと思われるが、立入検査隊は武装しているので1分隊幹部が指揮した方が良い)

砲雷長や砲術長は警告射撃に備えて艦内にて配置に就く必要がある。

水雷長は対潜戦でない限り出る幕はない。(つまり、手が空いている)

思いつく理由としては、こんな感じでしょうか。

 

この時期は法律制定からまだ日が浅く、装備等は支給されているものの、訓練のやり方さえ確立していないような混沌の真っただ中にありました。

構成隊員の中には、立入検査課程就業者(第1術科学校において教育する課程)が数名いたので、彼らを核に定期的に訓練を行っていたのですが、肝心の指揮官である私が借り物の薄っぺらい教本を頼りにしている状態なので、訓練の全体像がイメージできず苦慮する日々でした。

停船命令から立入検査隊の乗船、船内捜索などの手順については、教本通り訓練すれば一定の練度向上は期待できるのすが、肝心な部分が欠落しているというか、指揮官個人の判断に委ねられている気がするのです。

もちろん、順守すべき法は明確に定められていますが、切迫した状況下でどこまで冷静に対処できるかは個人に資質に負うところが大であると思うのです。

 

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嫌疑のかかった船舶に対して立入検査を実施するのですが、黒なら停船命令に従わず逃走するでしょうし、白なら大人しく停船命令に従って検査を受けると思われます。

しかし、困るのは乗船した立入検査隊を人質にとって逃走された場合です。

立入検査隊の生死が確認できない以上、船体への射撃を決断できる指揮官(司令、艦長)は多くないと思います。

停船命令を繰り返し実施しながら追走し、相手国領海の手前で最終的な判断を迫られることになるでしょう。

 

では、自分が立入検査隊を指揮して乗船し、不測の事態が生起した場合どのように対処すべきか。

ここに至ってもなお、正当防衛の範囲内でしか対応できないのです。

自分自身はともかくとして、部下が目の前で害されようとしたとき、果たして冷静に対処し得るのか。

海上自衛官は、陸上自衛官と異なり、目の前の敵に対処するということに免疫がありません。

海上自衛官にとっての敵とは、モニター画面に映し出された輝点(シンボル)に過ぎないからです。

 

しかし、自分の選択した対応が法の限度を超えたとしたら、それが大戦への引き金になりはしないだろうか。

どんな大きな戦争も、元を辿ればほんの小さな事件がきっかけとなっているものだからです。

法を順守して全滅するか、法を破っても部下の生命を守るのか。

この究極の選択に直面し、悩むこととなったのです。

そして、どれほど悩んでも明確な回答は得られない性質のものなのです。

 

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