海上自衛隊、指揮統率

 

海上自衛隊は正真正銘の海上武力集団であるので『指揮統率』という概念は常日頃から意識しているものです。

しかし、『指揮統率』という言葉の響きからは何だかお堅くてとっつきにくい印象を受けてしまいます。

そこで、このブログではもっとシンプルかつライトに『指揮統率』を考えてみたいと思います。

もちろん、私の勤務経歴は中級幹部(3等海佐)で終了しており、将来の指揮官を養成する『指揮幕僚課程』は未修業でありますので、上級指揮官の本流教育を受けることなく自論を述べているに過ぎないということを予めお断りしておきます。

それゆえに『シンプルに』という言葉をもって語っていくことにします。

 

Sponsored Link

 

士は己を知る者のために死す

これこそが指揮統率の目指す究極のゴールではないでしょうか。

部下をしてこのような精神状態に至らしめることができれば、既に指揮統率は完了しているといえます。

死という言葉を軽々に使用することについて異論反論もあろうかと思いますが、いざ有事のことを考えれば避けては通れない課題であります。

平時であれば『如何なる努力も惜しまない』と言い換えることも可能です。

 

もちろん、上級指揮官が個人の影響力を部隊の末端に至るまで及ぼすとなると容易なことではありません。

(指揮官の中にはそれを実現されている方々も存在しますが)

ですから、まずは自分の直近の部下たちを啓蒙できれば良いのです。

その部下たちはそのまた配下の部下を啓蒙するという形で信頼関係を順送りに構築すれば、結果として組織全体の士気を非常に高く保つことが可能となります。

 

しかし、そうはいってもまだまだ抽象的ですので、更にかみ砕いて解析する必要がありますね。

つまり、どうすれば

『士は己を知る者のために死す』

という状態に導くことができるか、もっと具体的に考えてみましょう。

 

他人に本気で向き合うために必要なこと

是非ともご自身の立場に置き換えてみて頂きたいのですが、何か問題が生起したあの日あの時のことを思い出してみて下さい。

あなたはあなたの上司や部下に対してどれだけ本気で向き合うことができたでしょうか。

もしも、あなたが自信を持って

「オレは心底から本気で向き合った」

と断言できるならば、きっと素晴らしく強固な人間関係を構築できていることは疑いありません。

しかし、所詮我々は感情に左右される生身の人間ですから、向き合う相手によって好き嫌いもあるでしょうし、何よりも自分自身の状態が心身共に充実していなければ他人に対して本気で向き合うだけのエネルギーなど決して生まれてこないでしょう。

だからこそ、他人に全力で向かい合うためにも、まず自分自身を高めていく必要があるのです。

 

自衛隊は仲良しクラブではない

Sponsored Link

 

一つ注意しておきたい大きな落とし穴は、本気で相手に向き合うことの真意を表面上の馴れ合いともいうべき『仲良しクラブ』の状態と混同してはならないという点にあります。

特に若い頃に陥りやすい過ちなので初級幹部の諸官は心して聞いて欲しいのですが、自分では相手に対して本気で向き合っているつもりだったのに、いつしか相手に迎合し媚びてしまっていることがあるということです。

それはほとんど無意識になされることが多いだけに注意が必要だといえるでしょう。

 

部下の人格や職責に敬意を払うことは当然のことですが、相手に同調するあまり取り込まれてしまってはならないのです。

この辺りのさじ加減が初級幹部といわれる2等海尉や3等海尉には難しいものですね。

初級幹部は自分が寄って立つべき経験や術科技能が不足しているにも関わらず、勤務の最初から部下を指導監督する中間管理職として経歴をスタートさせなければならないからです。

 

実際に私自身も部下の立場や気持ちに同調するあまり、士官室のとりわけ副長と対立しそうになった経験があります。

いや、もしかするとガッツリ対立していたような気さえします(笑)

しかし、それでは本末転倒なのです。

あくまでも幹部は幹部としての立場をわきまえた上で、部下と真摯に向き合い尊敬と愛情を勝ち得なければならないのです。

幹部として指揮統率を極めていく道のりは、このように地味で根気を必要とする日々の積み重ねにこそあるのです。

随分と高いところから物を申すようで甚だ恐縮ですが、指揮統率について現職当時から思うところを述べさせて頂きました。

何かの参考になれば幸いです。

 

Sponsored Link